「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第15回】 新興国危機の真のリスクとは?

米国のシェールガス採掘現場〔PHOTO〕gettyimages

米国金融政策の出口政策が早ければ9月にも開始されるとの思惑から、米長期金利が上昇。それにともない、新興国の株価、及び通貨の下落が顕著になりつつある。筆者は、そう簡単にFRBが出口政策を実施するとは思っていない。現在の市場の思惑は、9月以降、修正されるのではないかと考えているが、いうまでもなく、出口政策は、経済政策の1つで、政策当局者が決めるものであり、筆者の考えが実現する保証はどこにもない。

出口政策が実施されるか否かは、誰にもわからない。よって、出口政策の先行き(出口政策をやるかやらないか)にベット(賭ける)する投資行動は極めて危険である。その意味で、新興国市場から海外投資家の資金が逃避するのは致し方ないかもしれない。

「通貨防衛策を採るか採らないか?」が鍵となる

ところで、新興国悲観論を突き詰めていくと、1997、98年に起こったようなアジア通貨危機、ロシア通貨危機などのような「新興国危機」が再発する懸念も否定はできない。ただし、現在は、多くの新興国が「変動相場制」を採用しており、原理上は、新興国の政策当局者が、通貨下落を許容するような政策を採ることができれば、ショックは一時的なものにとどまるはずである。

アジア通貨危機では、東アジアの多くの新興国が、ドルペッグ(自国の為替レートの対ドルレートを固定させていた)を採用しており、海外資金の流出による自国通貨安を政策当局が自国通貨買い・ドル売りの為替介入を阻止する必要が制度上生じた。この介入によって外貨準備が枯渇し、対外債務の支払いが滞るのではないかという懸念が台頭したことが危機につながった。

しかし、変動相場制に移行した現時点では、政策当局が通貨安を容認し、為替介入を実施しなければ、外貨準備は減少せず、対外債務支払いが滞る懸念はそれほど大きくならない。

それどころか、むしろ、新興国で短期的なクラッシュが発生した後のリバウンドは、かなり大きいことが想定されるため、新興国市場のクラッシュは逆に絶好の投資機会を提供するかもしれない(これを「Optionality(オプショナリティ)」という)。

そのため、新興国にとっての問題は、海外投資家の資金が逃避する懸念というよりも、政策当局者が「旧来の考え方」に固執して、クラッシュの被害を甚大、かつ長期化させてしまうことであろう。もし仮に、米国で早期に出口政策が実施された場合、その「中長期的な」影響が大きいと考えられる国とそうではない国とを峻別する鍵の1つは、「通貨防衛策を採るか採らないか?」ということになろう。

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