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盛夏の特別読み物 死ぬことは怖くない死後の世界は必ずあるから 臨死体験を研究した 京都大学カール・ベッカー教授の結論

「その時」が来ると、人は懐かしく優しい風景を見ると言われる。それは最後に脳が見せる幻、そんな声もある。だが果たしてそうだろうか。この世とあの世の境界には、まだ我々の知らない理がある。

奇跡は起きた

 当時15歳の少年・A君の事例だ。A君はある日、学校帰りにバスを降りたところで自動車にはねられ、頭蓋骨から脳の一部が飛び出すほどの重傷を負い、49日間も生死の境をさまよった。

 だが50日目、奇跡が起きる。意識が戻ったのだ。まだ人工呼吸器を付けたままで話ができない彼は、しきりに何かを伝えようとしている。そこで周囲がノートを渡すと、「知らないお爺さんから『帰れ』と言われ、帰ってきた」と記した。

 驚いた病院関係者から連絡を受け、A君の証言を記録するために駆けつけたのが、現・京都大学こころの未来研究センター教授のカール・ベッカー氏だった。

「私がA君に会ったとき、A君は人工呼吸器も外れ、話ができるようになっていました。彼いわく、意識を失っている間に"暗いトンネル"を3回ほど通ると長い"川"に出て、船でその川を遡った、と。すると向こう岸に"花園"が見えたので、船を降りてそこで遊ぼうとした。ところが、知らないお爺さんが出てきて『お前はXか』と聞かれた」(ベッカー氏・以下同)

 Xというのは、A君の父の名前だった。A君と父のX氏はよく似ていたという。A君が「いや違う」と答えると、老爺は「まさかAではないだろうな。早過ぎる。帰れ」と命じた。A君はそれでも花園にいようとしたが、老爺が許さない。仕方なく、もとの川を下り、長いトンネルで待たされていたところで意識が戻ったという。

「話を聞いたA君のお母さんは、その容姿や動作、話し方が、自分の祖父に非常に似ていることに驚き、A君に古い写真を見せました。A君はそれまで、曾祖父と会ったことも写真を見たこともなかったはずなのに、写真を見るや『この人だ』と言ったのです。A君は、知らないはずの彼の曾祖父に"あの世"で出会っていたことになります」

世界中で報告される実例

 人が亡くなる時、あるいは亡くなりかけた時に見るビジョンを、一般的に「臨死体験」(臨死現象)という。

 日本のみならず、世界各地で無数の事例が報告されているこの現象について、いまだ明確なメカニズムは解明されていない。だが冒頭の例にあるように、臨死体験そのものは確かに存在する。人は死ぬ直前、あの世とこの世の狭間で"何か"を見るのだ。