ブルーバックス
『大栗先生の超弦理論入門』(大栗博司=著)より
【第2講】 「点粒子」が引き起こす「無限大」という困難

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遠隔力の不思議を説明する「場」

素粒子の理論に重力を組み込むのが難しい理由は、粒子の間に働く力の伝わり方にありました。粒子の間の力を伝える「場 」というものの性質が問題だったのです。そこで、まず、「場」の考え方についてお話ししましょう。

物質の根源を探る研究が進む一方で、磁石や電気などの研究から、自然界には粒子のほかにも、何か物理的な実体があることがわかってきました。それを考えるきっかけになったのは「遠隔力」の存在です。

磁力の存在は、古くから知られていました。磁石を近づけたり遠ざけたりすると、近くにある金属の運動をコントロールすることができるので、なにやら力が働いているということがわかります。

しかし、手で押した荷車が動く場合には、荷車に触れている手から直接力が伝わりますが、離れた場所から金属にくっついたり、お互いに反発し合ったりする磁石の力は、人々の目に不思議なものとして映っていました。

このように「離れても伝わる力」のことを、遠隔力と呼びます。「場」という概念は、この遠隔力を説明するために考えられたものでした。物体と物体の間には場という実体があり、それが力を伝えていると考えるのです。たとえば磁気の力を伝えるのは「磁場」で、電気の力を伝えるのは「電場」というわけです。

物理学の定義でいえば、「場」とは「空間の各点で値(力の大きさや方向など)が決まっているもの」のことです。これだけでは抽象的すぎてわかりにくいでしょうが、それを目に見えるようにする実験は、誰でも小学生時代にやったことがあるはずです。磁石の上に紙を載せ、そこに砂鉄をまく実験です。

このときに砂鉄が描く模様は、磁石の周囲に生じた磁力線の形です。それを見れば、紙の上の各点ごとに磁気の大きさや方向が決まっていることがわかります。これが「磁場」なのです。