ブルーバックス
『大栗先生の超弦理論入門』(大栗博司=著)より
【第1講】 物質の基本が「点」ではなぜ問題なのか

 【はじめに】はこちら

「点」とは部分を持たないものである

古代ギリシアの時代から、現代の素粒子論に至るまで、人類は、すべての物質の基本は大きさを持たない「点」のような粒子であると考えてきました。ところが超弦理論では、物質をつくっているのは粒子ではなく、なにか「ひも」のように拡がったものであると考えます。

すべてのものが「点」でできていると考えるのでは、なぜいけないのか。まずはそこから話を始めましょう。

紀元前三世紀の数学者ユークリッドは、『原論』を著し、幾何学の基礎を築きました。その第一巻は、さまざまな用語を定義することから始まっています。そして、その最初に置かれたのが「点」の定義でした。それは、こういうものでした。

点とは部分を持たないものである

現代の数学の基準では、これは厳密な定義とは言いがたいのですが、重要なのは、ユークリッドが幾何学を構築するうえで、まず「点」を定義しなければいけないと考えたことです。「部分を持たない」のですから、点には長さも幅もありません。