問題企業を糺すドラマがこれからのトレンドになる!?
労働基準監督署が舞台の『ダンダリン』にヒットの予感

日本テレビ『ダンダリン』公式HPより

『Woman』『半沢直樹』にみられる革新的なリアリティー

1992年、仁侠界の裏側を描いた映画『継承盃』(監督・大森一樹)が公開された際、宣伝コピーとして「今までの仁侠映画、あれは間違いでした」という文言が使われた。これに憤慨したのが、故・深作欣二監督。1970年代を中心に数々の仁侠映画の傑作を撮ってきたのだから、怒るのも無理はない。

無論、『継承盃』の制作サイドは、深作氏らの作品を否定した訳ではなく、それぐらい進取の気構えで作ったということだ。過去の踏襲や模倣ばかりでは、良質の映画は作れない。実は、深作氏の仁侠映画もドキュメンタリー風に撮影されるなど、既存作品とは異質であり、新しかったのだ。

ドラマも同じ。ホームドラマの傑作として今も語り継がれているTBS『岸辺のアルバム』(1977年)は、母親(八千草薫)の不倫や父親(故・杉浦直樹さん)のインモラルなビジネス、長女(中田喜子)のレイプ被害などを描き、それまでのホームドラマの常識を叩き壊した。当時としては革新的な内容だったことも高い評価につながった。

現在放送中で、やはり評判高い『Woman』(日本テレビ)も、既存作品とは異質のホームドラマだ。見どころは、ヒロイン・満島ひかり(27)と母親役・田中裕子(58)の名演ばかりではない。まず、ドラマを少しでも見れば分かる通り、ほかの作品とは映像が違う。

撮影カメラは、映画と同じ単焦点のレンズ(単眼レンズ)。それにより、バックがぼやけた奥行きのある画質や、フィルム撮影のような味わいが生まれている。その代わり、映画と同じくワンカットずつしか撮影できず、場面転換のたびにレンズ交換が必要となるため、途方もなく手間が掛けられている。

『Woman』は筋書きも既存のホームドラマとは一味違う。過去、ヒロインの長女(満島)を見捨ててしまい、自責の念にかられている母親(田中)は、その代償行為として、二女(二階堂ふみ)に過度な愛情を注ぎ込む。一方で、二女は長女に嫉妬して、長女の夫(小栗旬)に罠を仕掛け、事故死に至らしめてしまう。それにより、母親はさらに重い罪の意識にさいなまれ、ヒロインはやり場のない怒りを抱える---。

近年のホームドラマで描かれてきた家庭は、あまりにも平和過ぎたのではないだろうか。あるいは、殺人事件が起きるなど、抱えている問題があまりにも大き過ぎた。どちらにせよ、リアリティーが欠落していたため、全体のテーマがぼやけてしまっていたように思う。

メガバンクを舞台にしたTBS『半沢直樹』も新しい。銀行マンが描かれたドラマは過去にいくつもあったが、そこに登場した銀行マンたちは、企業の成長に一役買ったり、あるいは貸し渋ったり、誰にでも想像が出来てしまうようなステレオタイプの人物ばかりだった。けれど、半沢直樹(堺雅人)は違う。上司の不正には憤怒するし、同僚の左遷には悲嘆する。家庭では妻に気を使う。生身の人間だ。

半沢が24時間働かないところも新しい。会社に身を捧げる企業戦士が正しいとされた時代は、せいぜい1990年代までだっただろう。家庭や友情をないがしろにするビジネスマンなど、今や誰からも尊敬されない。半沢は同期行員らとの友情を大切にして、左遷された仲間のことまで気遣う。時には仕事より友情を優先する。これまで描かれてきたビジネスマンとは違う。

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