ドクターZは知っている

官僚の出世競争を『半沢直樹』とくらべてみると・・・・・・

2013年09月01日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任------。人気ドラマ『半沢直樹』(TBS系)が描くのは、銀行業界における人事を巡る恐ろしい実態である。こう書くと、人事に生きがいを感じ、責任のなすり付け合いを行い、熾烈な出世競争を繰り広げるのは官僚の世界も同じではないか、との声も聞こえてきそうだ。果たしてどうか。今回は官僚の人事をめぐる実情をお届けしよう。

まず一般論として言えば、官僚の出世競争はそれほど激しくはない。というのも、官僚は入省時から「身分制度」が試験区分として確立されており、出世競争をしなくても済むようになっているからだ。具体的には、幹部になれるのは「国家公務員上級甲種試験」合格者だけ。この試験の名称は、'85年度から「国家公務員I種試験」、'12年度からは「国家公務員総合職試験」と名称は変わったが、「キャリア官僚」と言われることに変わりはなく、この試験に受かっていないと幹部登用は事実上無理なのである。

逆にいえば、この「上級甲」に受かってさえいれば、〝ハズレ〟でも課長や審議官といった幹部になれる。トップの事務次官になれるのは一人だが、仮にトップになれなくても、世間から見れば羨望の天下りポストがあるので、キャリア官僚は「おいしい」。その意味で、官僚の世界の出世競争は大したことがないといえる。

もっとも、こうした幹部の中だけの狭い世界を見ると、局長や事務次官になるか審議官止まりかで、天下り先の待遇などに差が出るため、それなりに上の「幹部」になろうとする出世競争は存在する。

カギを握るのは、出来るキャリア官僚だけの特権である「後任推薦」だ。後任推薦というのは、自分の後任として誰がいいのかを人事当局が聞いて来るため、具体的な人物を推薦するというもの。制度的なものではないが、事実上の慣行として存在している。出来るキャリア官僚が後任に推薦した人物は、ほぼ間違いなくそのポストに座る。推薦したキャリア官僚もまた、誰かの後任推薦を受けて別ポストに異動する。

つまり、出来るキャリア官僚は、人事異動が発表になって初めて自分の人事を知るのではなく、事前に聞いている。そのような人事異動を事前に知ることが可能な「出来るキャリア官僚」のインナー・グループが形成されている。

出来るキャリア官僚の出世競争とは、このインナー・グループに参加できるかどうかに尽きる。そのためには、能力の品定めが行われる課長補佐時代に、東京の本省にいるほうが好都合。この時期に、地方支局や他省庁に出向している者は参加資格がない。

インナー・グループに参加するために、ボスの好きな麻雀にわざと負けて毎月十数万円を貢いだという話もある。休日はゴルフで、ボスの送り迎えくらいは当たり前ともなる。

閨閥(けいばつ)もまた、官僚の出世競争には大きい要素だ。有力政治家、有力官僚OBの子女とのお見合い結婚は、出来るキャリア官僚の間では珍しくない。そうした子女を斡旋する人事の幹部は、同時にインナー・グループのボスになっている。

閨閥にまで至らずとも、出来る官僚の出世には、有力政治家、有力官僚の後押しは欠かせない。そのためには、各種の勉強会への参加が必要だ。彼らの〝覚え〟を獲得して、連絡を取るための携帯電話番号を教えてもらえるかどうかがポイントだ。こうした勉強会は、毎晩都内のホテルで行われている。

『週刊現代』2013年9月7日号より


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