【金融 その1】 東京をアジアNo.1の金融市場に! (1)
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昨年末までの民主党政権の3年間は、金融・資本市場の競争力強化に関しては、何も進まなかったのが現状だ。民主党は金融に関心がなかったのか、最後の2ヵ月の中塚大臣を除いて、大臣ポストは国民新党に明け渡した。

国民新党からの金融担当大臣は、中小企業への金融モラトリアムを実施したり、日本郵政の民営化と逆行したりで、経済的には負の貢献しかしなかった一方、グローバルなマーケットにおける日本の金融や資本市場の競争力強化という視点は皆無だった気がしてならない。

日本には、1,500兆円に上る個人金融資産があり、日本企業は約225兆円という過去最高の現預金を保有しているにも関わらず、日本の金融・資本市場は国際的な強さを持っていない。

その原因は、1,500兆の個人資産、企業の資金、年金基金、大学基金といった資金が、リスクマネーとなって投資に回っていないためだ。安倍政権では、秋に金融・資本市場の活性化策を検討し、アジアの成長を取り込みつつ、アジアNo.1の金融・資本市場の構築を目指そうとしているが、具体策はこれからのようだ。

国内の金融マーケットの強化に向けて、今、改めて東京をアジアNo.1の金融市場にするために取るべき政策を提言する。「もう手遅れだ」という声をよく聞くが、諦めてはいけない。今からでも巻き返すことが十分可能だと思っている。

まず、今回の「行動」において、個人金融資産を含め国内のあらゆる資金をリスクキャピタルに回すための政策について述べ、次回では、制度や仕組みについて提言を行うこととする。

1. 個人金融資産をリスクキャピタルに!

日本には、1,500兆円の個人金融資産がある。東京をアジアNo.1の金融市場にするためには、なんといってもこの1,500兆円をリスクマネーに回すことだ。先ずは、なぜ1,500兆円が現預金に偏重し、動かずに眠っているのかを分析してみよう。

日本では被相続人(相続を受ける人)の平均年齢が67歳だという。被相続人が配偶者の場合もあるが、その被相続人が子供たちの場合でも、既に定年後の高齢者の方の場合が多い。つまり、マネーが高齢者の間で滞留しているのだ。

金融資産の60%超は、60歳以上が保有しているという統計データがある。1,500兆円の個人金融資産の殆どを、高齢者が保有している。

高齢者が資産を持つと、消費をせずに、投資にも回らず、そのほとんどが銀行預金に偏っていく。銀行に資金が回ると、BIS規制により、リスク資産には多くの資本を積み増す必要があるので、自ずと貸出か、国債への投資に偏重することになる。ただ、最近では貸出が増えていないので、どんどん国債保有の比率が上昇している。

つまり、1,500兆円の個人資産は、株式や不動産投資などのリスクキャピタルに向かわずに国債等の投資に向かっているのだ。従い、株式市場のリスクキャピタルの供給元は外国人投資家が占めることになり、市場での存在感が極めて大きいという日本の金融市場の構造が現れる。

そのためには、小口投資をしやすくするいくつかの政策を通して、この構造転換が最初の課題である。

その観点からも、小口の個人投資促進の観点で、今年度税制改正においてNISA(小額投資非課税制度)が導入されたことは評価すべきだ。この制度は、英国の「Individual Savings Account(個人貯蓄口座)」制度の日本版ということでNISAと呼ばれているが、新規投資や上場株式から生じる所得への課税が、「NISA」を利用すると、最大500万円まで(毎年100万円×5年)、値上がり益や配当・分配金が非課税となる制度だ。

英国のISAでは、1999年から始まり、英国の投信残高全体の18%程度がISA経由の投資となっている。「日本版ISA」の導入期間は来年から10年間とされているが、その恒久化や、非課税対象の拡大などで、小額個人投資家の投資をさらに促進すべきであろう。

また、国民の意識改革も必要であろう。現状では、銀行に預金することは、結局国債へと資金を回すことになるのだ。安定を求めて銀行に預けると、リスクキャピタルに資金は回らないので、日本経済への貢献は限定的となる。

何気なく銀行に預けるのではなく、意識して不動産を買うなり、公開株式や未公開企業へのエンジェル投資、さらには投資信託やREITに回すなど、経済的な乗数がより高いリスクキャピタルへと資金を回すことが、今求められている。一人一人の「行動」が、日本の金融市場の体質改善に寄与するのである。

歴史的に見ていくと、資産家になった人々の殆どが、金融資産のキャピタルゲインによってであることがわかる。報酬のみで資産家になった人は少ない。得た報酬を如何に運用するかによって、個人資産の増大が決定づけられるし、日本経済への貢献度合いも高くなるのである。面倒臭がらずに、投資への意識を高めたいものだ。

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