ブルーバックス
『単純な脳、複雑な「私」』 池谷裕二=著 最終回
脳研究がとらえた「幽体離脱」の真実!
誰もが持つある脳の機能に秘密が!? 本文より抜粋

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脳研究がとらえた「幽体離脱」の真実!
誰もが持つある脳の機能に秘密が!?

幽体離脱を生じさせる脳部位がある

 脳を直接に電気刺激して活性化させる実験がある。

 刺激すると、刺激場所に応じていろいろな反応が起こる。たとえば、運動野を刺激すると、自分の意志とは関係なく、腕が勝手に上がったり、足を蹴ったりする。視覚野や体性感覚野を刺激すると、色が見えたり、ほおに触られた感じがしたりする。

 そうやって、刺激によっていろいろな現象が生じるのだけど、なかには信じられない現象が起こることがある。たとえば、これは一昨年(編集部注・講演時点から)に試された脳部位だけど、頭頂葉と後頭葉の境界にある角回(かくかい)という部位。この角回を刺激されるとゾワゾワゾワ~と感じる。

 たとえば1人で夜の墓地を歩いていると、寒気がすることない?

──あります!

 それそれ、あんな感じらしい。角回を刺激すると、自分のすぐ後ろに、背後霊のようにだれかがベターッとくっついている感じがするようなの。うわーっ、だれかにつけられている。だれかに見られている……強烈な恐怖を感じるんだって。

 でもね、その背後霊を丁寧に調べてみると、自分が右手を上げると、その人も右手を上げるし、左足を上げてみると、その人も左足を上げる。座っていると、その人も背後で座っていることがわかる。

 これで理解できるよね。そう、実は、背後にいる人間は、ほかならぬ自分自身だ。

 要するに、「心」は必ずしも身体と同じ場所にいるわけではないということ。僕らの魂は身体を離れうるんだ。この例では、頭頂葉を刺激すると、身体だけが後方にワープする。

 この実験で興味深いことは、その「ゾワゾワする」という感覚について尋ねてみると、背後の〝他者〟に襲われそうな危機感を覚えているという点だ。これはちょうど統合失調症の強迫観念に似ている。

 これで驚いてはいけない。身体と魂の関係については、さらに仰天するような刺激実験がある。先ほどの実験と同様に角回を刺激する。ベッドに横になっている人の右脳の角回を刺激するんだ。すると何が起こったか。