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2013年08月27日(火)

『単純な脳、複雑な「私」』 池谷裕二=著 第2回

好印象を与えたいなら、顔の左側を念入りに!
人は顔の左半分しか見ていない 本文より抜粋

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好印象を与えたいなら、顔の左側を念入りに!
人は顔の左半分しか見ていない

焼き魚が頭を左にして出される理由

 脳は顔に敏感なんです。ところが、顔全体をじっくり隈なく見ているようで、実際には、顔の半分しか見ていない。左側だけです。左側さえ男だったら、右が女であっても、全体を男だと思っちゃうんですね。

 さて、なぜこのように「半分しか見ていない」なんて不思議なことが起こるんでしょうか。この答えは、おそらくみなさんが持っている脳に関する知識を総動員するとわかります。

 それは脳が左右対称ではないからなんです。形はほぼ左右対称ですよ。でも機能が違う。左脳には、ウェルニッケ野やブローカ野などといって「言語野」がある。だから、言語は主に左脳がつかさどる。一方、「イメージ」や「映像」は右脳がつかさどる傾向が強い。

 脳が支配する体側(たいそく)は左右交差しますね。だから人の顔を見るとき、左側の視野で見たものは、交差して右脳に届きます。これでおわかりですね。私たちが見たものを判断するのは「左側」の視野が中心。

 たとえば、スーパーマーケットや八百屋では、特売品やセール品は、人の流れに対して左側に置くと目に留まりやすく、販売数も伸びるというデータがあります。あるいは、本やポスターは左側にイラストや写真を載せた方が印象に残ります。もっと身近な例では、魚料理もそう。頭を左に向けて置きますよね。

wikipediaより引用

 私がこういう話をしていて思い出すのは、これです、『モナ・リザ』。ダ・ヴィンチの描いた歴史的名画ですね。「神秘のほほ笑み」とか「の微笑」なんて言われるモナ・リザの表情。でも、どうですか。正直に言いまして、はじめて私がこの絵を見たとき、えっと、小学生の頃ですね、そのとき私は、モナ・リザは笑っているようには思えなかったんです。でも今、改めてよく見ると理解できます。

 モナ・リザが笑っているのは、そう、絵の向かって右側なんですよ。左半分は、むしろ神妙な顔つきをしていますね。だから絶妙なんです。ぱっと見では必ずしも笑っていませんが、でも、じっと見ていると「そう言われてみれば、笑っているような気がしないこともない」という不思議な感覚がするんです。実際、左右反転してみると、ほら、ほとんど別人になってしまいます。

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