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ジャーナリストは左でなくちゃいけない!

メディアやジャーナリストに政治的な立ち位置はあるのだろうか。先日、関西の人気テレビ番組に出演したとき、こんな話題で盛り上がった。私と同じく活字メディア出身のジャーナリストはこう言った。

「私の先輩たちの時代は『ジャーナリストは左でなくちゃいけないんだ』と言ったもんですよ。政権を批判するのがジャーナリストなんだから、という理屈ですね」。彼の頭には、1980年代前後に活躍したニュースキャスターや著名記者たちが念頭にあったようだ。

ひと昔前のジャーナリストには、就職前に学生運動を経験した人たちも多かった。学生時代から政府を批判するのが正義と信じ、新聞社やテレビ局に就職して記者になってからも、政府批判をするのが社会に対する職業的使命、と心得ている人々である。後に述べる理由で、私にはこの感覚がよく分かる。

放送出身の別のジャーナリストは「テレビに登場するジャーナリストは真ん中より少し左というのが、普通の立ち位置じゃないか」と語った。これも基本的には「政府批判こそがジャーナリストやメディアの役割」という理解から出てくる話だろう。

「ジャーナリストは真ん中より少し左」という話は本当だろうか。あるいは「少し左のジャーナリスト」は本当に世の中の役に立っているのだろうか。私には、そういう問題の立て方自体が「ちょっと違うんじゃないか」という感じをぬぐえない。今回はその辺の問題に触れてみたい。

「右か左か」は酒席の戯言

まず「メディアやジャーナリストは中立公平であるべきだ」という議論がある。これは、はっきり言って建前だ。前に触れたように、テレビの選挙特番では各党の意見を横並びで紹介するのが通例になっている。だからといって、番組に登場する司会者やコメンテーター、ジャーナリストに自分の意見があってはいけないのか、と言えば、そんなことはない。

最近は自分自身の意見表明は極力、控えるようにするメディア出身のコメンテーターたちの姿勢が目立つが、たとえば田原総一朗のように、意図的と言ってもいいくらいに自分の「独断と偏見」をズバズバと出演者に投げかけて挑発する司会者もいる。それで田原が批判されているかといえば、そんなことはない。視聴者も分かっているのだ。そもそも自分の意見がなければ、言論の自由も表現の自由もない。

では「真ん中より少し左がジャーナリスト」という話はどうなのか。この話をきちんと議論しようとすれば、そもそも「真ん中」とは何か、あるいは右とか左をしっかり定義しなければならない。それはやっかいな話だ。一般的に、右は「ナショナリズム重視」とか「国益重視」、左は「公平な分配重視」とか「戦争反対」といった要素で色分けされる場合が多い。

だが、厳密に考えれば、それはほとんど意味がない。なぜなら左だってナショナリズムや国益を重視する人はいるし、右だって狭いナショナリズムの対極にあるグローバリズムや公平な分配を重視し、もちろん戦争反対の人もいるからだ。つまり、右とか左という色分けは、極めてあいまいな雰囲気のようなものなのだ。

だから「少し左のジャーナリストが世の中の役に立っているか」となると、それはもう「少し左の雰囲気を漂わせた人の仕事が世の中を良くしているか」という話になって、ほとんど酒席の戯言と変わりがない。いい大人が真剣に議論するには値しないのである。

バリケード封鎖が新聞記者になったきっかけに

実は、私も学生運動の経験者だ。高校2年で初めてデモを経験して以来、日比谷公園や清水谷公園の集会・デモに何度も行った早熟な高校生だった。大学時代には、自治会の副委員長を務めてストライキを決議した。ゼミはマルクス経済学である。

そもそも、なぜ私が新聞記者になったかと言えば、高校2年のときに学校の図書館がバリケード封鎖され(私がそれに関わったわけではない)、校内に機動隊が入った。大騒ぎになった、その件で新聞の取材を受けたのがきっかけである。そこで初めて「記者」という存在を知った。

私を取材した記者は、後に「ウチの社の世論調査のアルバイトをしないか」ともちかけてくれた。それで記者と付き合っているうちに「自分もいつか新聞記者になろう」と思ったのだ。大学に入ってストが終わり、自治会活動を止めて、就職が迫ったときも初めから、就職先の希望は新聞社以外に考えられなかった。

かつて「左翼崩れの記者」という言葉があったが、それは我ながら、私にぴったりだと思う。だから「ジャーナリストやメディアの仕事は政府批判」という気分は非常によく分かるのだ。・・・・・・

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