賢者の知恵
2013年08月24日(土) フライデー

話題の本の著者に直撃!本谷有希子
結婚して普段からいびつであることを
心がけるようになりました

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もとや・ゆきこ/'79年石川県生まれ。'00年「劇団、本谷有希子」を旗揚げ、作・演出を手がける。'06年上演の戯曲『遭難、』で鶴屋南北戯曲賞、'08年上演の戯曲『幸せ最高ありがとうマジで!』で岸田國士戯曲賞を受賞。'11年に小説『ぬるい毒』で野間文芸新人賞を、'13年『嵐のピクニック』で大江健三郎賞を受賞〔PHOTO〕朝岡英輔

取材・文/伊藤淳子

―これまでの本谷さんの小説とは作風が一変しました。構想の発端はなんだったんでしょう。

 前作の『嵐のピクニック』という短編集を書いていたとき、短編というスタイルが自分にとてもフィットするのを感じたんです。とはいえ、もう一度同じことはしたくない。だったら、あの感覚の延長線上で長編が書けないかという試行錯誤から始まりました。

 そのうちにふと、女性の人生を長い時間の流れのなかで描くのはどうだろうというアイデアが浮かんだんです。そこまではよかったけれど、その先をどうしていいかわからない。それでまず63歳の一日を書いてみて、そのあとに20代、30代を書き、じゃあ16歳も……と、そのときどきの流れに身を任せるようにして書いていきました。

―各年齢ごとに、特別な事件が起こるわけではないある一日が丹念に描き出されています。あえて物語が生まれにくい設定にしたのは、なにか意図するところがあったのでしょうか。

 私は、書いているうちにどうしても、ドラマチックな方向やカタルシスが得られる方向に話を展開したくなる。それはどこかで「こうでなきゃ」という固定観念からきているんです。

 でも、いま私が意識しているのは、そういう固定観念を取り払ったところで、小説の可能性をもっともっと考えながら書くこと。だから、盛り上がる状況や特別な出来事がなくても、小説はきっと深いものが表現できるはずだという自問自答のもとに、ともすればすぐに特別なことを書いてしまう自分にダメを出し続け、何度も書き直しました。

―主人公のリンデは、それぞれの年齢なりのリアリティがありますが、なかでもまだ若い本谷さんが、63歳のリンデの〝老い〟を非常にうまく表現されていることに感心しました。

『嵐のピクニック』では宇宙人を描きましたが、自分が経験したことがない年齢を描くのはそれと似ていて、私のなかでは同じようにフィクションなんです。知らないことを書きたいという欲望が以前よりどんどん強くなってきているので、63歳の女性のディテールをイメージするのは本当に楽しかった。

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