「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第14回】 フィリピンは次の成長フロンティアなのか?

〔PHOTO〕gettyimages

従来から言及してきたように、筆者は、新興経済圏の高成長ブームがまもなく終焉を迎えるのではないかと考えている。だが、世の中では、「次なる成長フロンティア」を探す動きが、依然として続いている。

成長フロンティアの候補として期待されるフィリピン経済

ブラジル、ロシア、インド、中国に続く成長フロンティアの候補として、これまでも、インドネシア、南アフリカ、メキシコ、トルコなど、様々な国が登場したが、いずれの国も、かつての「BRICs」のようなブームが到来するには至っていない。そして、最近になってクローズアップされつつあるのが、フィリピンである。だが、筆者の印象では、フィリピンが、このまま高成長を続けていくとはとても思えない。

フィリピンの1-3月期の実質GDP成長率は、前年比で+7.8%で、同時期の中国(+7.7%)を上回り、しかも、成長率は加速している。新興国の多くで成長率が鈍化、ないしは減速している中で、多くの人がフィリピン経済に強い期待を抱くのは、仕方がないことなのかもしれない。

ところで、最近のフィリピンの高成長には、いくつかのイメージがある。その中で代表的なものは、かつての中国にも勝る安価な労働力が溢れているというものである。しかも、その労働力が高品質であるというから、期待感が高まるのはなおさらである(しかも、これが本当であれば、この部分は当時の中国を上回る利点ということになる)。この「安価で高品質の労働力」というイメージから、今後、中国に代わる、有力な直接投資先として考えている企業も増えてきたようだ。

だが、現在の教育制度を考えると、フィリピンの労働力が、必ずしも高品質であるとは限らないと考える。現在、フィリピンの義務教育(と言っても、日本で言えば高校に相当するところまで)は6年だが、これはようやく2012年から始まったものであり、それ以前までは、わずか4年であった。よって、義務教育を超えた教育水準という意味で、フィリピンでの「大学生」とは、事実上、日本における「高校生」を指すようだ。

また、フィリピンの公用語の1つが英語なので、英語を話すことができる多くの安価な労働力が、フィリピン経済のメリットであると言われている。例えば、最近のフィリピン経済の成長を象徴するものとして、「UPO」と呼ばれるサービス業(コールセンターがその代表)の発展について指摘されることが多いが、それも公用語が英語であるというフィリピンの利点を生かした経済発展というイメージを作りあげている(筆者もフィリピン経済の専門家に話を聞くまではそう思っていた)。

だが、実は、フィリピンで英語を話すことができる学生は、富裕層のごくわずかであるらしい(主な公用語はタガログ語で、英語とは程遠い)。さらに、大学への進学率は、約10%ということだが、大学生の多くは教育学部に進み、将来は教職に就くか、医学部・看護学部で海外に仕事を求めるケースが多いという。

よって、最近、急拡大中と言われるサービス業、もしくは、中国に代わる直接投資先という意味で、エンジニア的な素養を持つ工場労働者の予備軍的な若年労働力の割合は、極めて低いのが現状である。このことは、もしフィリピンが、「イメージ通り」のパターンで高成長を実現させていたとしても、ボトルネックによる賃金上昇、及び、それにともなう高インフレが予想以上に早く到来する可能性が高いということになる。

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