ブルーバックス
『世界は2乗でできている』
自然にひそむ平方数の不思議
小島寛之=著

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フェルマーの定理、ゼータ関数、量子論、相対論……
数学・物理学の偉大な業績を「2乗」を切り口にたどる。

 同じ数を2回掛けると現われる「平方数」には、数の「遊び心」や物理現象の秘密がかくれている。ピタゴラス、ガウス、フェルマー、リーマンら偉大な数学者の業績に見える平方数から、ガリレイ、ボーア、アインシュタインら偉大な物理学者が見いだした自然法則まで、平方数に秘められた不思議で深遠な世界をわかりやすく紹介する。

はじめに

ようこそ2乗の世界へ

 同じ数を2回掛けることを「2乗するJという。とりわけ自然数の2乗(1, 4, 9, 16, …)は「平方数」と呼ばれ,古代から特別待遇の数となっている。

 みなさんは,この2乗計算が,私たちの住み暮らすこの世界を支配していることをご存じだろうか。そんな2乗にまつわる,とりわけ面白い法則や現象などを集めたテーマパーク「2乗の世界」へ,みなさんをご招待しよう。

 このテーマパーク「2乗の世界」は, 2つのランドから成りたっている。一つは数学ランド,もう一つは物理学ランドだ。この2つは,外から見ると遠く離れているように見えるが,中に入ってみると実は,鏡の壁一枚を通り抜けるだけで簡単に行き来できるのだ。

 数学ランドのほうでは,みなさんに平方数の不思議で遊んでいただこう。平方数は,ピタゴラスの昔から現代まで数学者たちを魅惑し,そして,たくさんのステキな法則が発見されてきた。

 まず,おなじみのピタゴラスの定理を出発点とする。そして,フィボナッチ数列の中の平方数,ペル方程式,オイラーのゼータ,ガウスの平方剰余と,めくるめく平方数の不思議巡りをしていただこう。中でも, 17世紀の数学者フェルマーが見つけた「4平方数定理」は際だって魅惑的である。それは,「すべての自然数は4個の平方数の和で表せる」という法則だ。この定理は,ただ美しいだけではなく,その後の数学を進化させる原動力になったのがみごとなのである。実際,この定理に秘められた秘密を暴こうとする努力の中で,保型形式やp進数という斬新な数学理論が生み出された。数学ランドでは,その保型形式やp進数の巨大なお城を垣間見ることができるだろう。

 物理学のほうにも,「2乗の世界」は広がっている。