サッカー
二宮寿朗「今季躍進の大宮、指揮官電撃解任の“怪”」

 今季のJ1で旋風を巻き起こしてきたクラブの指揮官がクビを切られたというから驚きだ。
 2005年のJ1昇格以降、ほぼ毎年残留争いに巻き込まれてきた大宮アルディージャを今季、一時は首位に引き上げ、昨シーズンから21試合連続不敗というJリーグ新記録を打ち立てたズデンコ・ベルデニック監督が解任された。残留争いをしているチームではなく、優勝の可能性が十分にあるチームの監督交代は極めてレアなケースと言っていいだろう。

好調の裏で起きたチームの変化

 7月13日の横浜F・マリノス戦で敗れて以降、リーグ戦5連敗を喫して順位は4位まで転落。浮上のきっかけをつかめないまま、8月10日にはセレッソ大阪に0-3と大敗を喫したことでフロントが監督交代を決断したというわけだ。

 クラブの公式サイトで鈴木茂社長は、ベルデニック解任について以下のようにコメントしている。
「ベルデニック監督は昨シーズンの厳しい時期に監督を受けていただき、昨シーズンから今シーズンにかけJ1記録を達成するなど、大宮アルディージャに貢献していただき非常に感謝しておりますが、チームとして今シーズンの目標を達成するため、監督交代を決断しました」

 感謝の意を強調しながらも「今シーズンの目標達成」のために、決断したというのが鈴木社長の説明であった。その目標とは、シーズン前に掲げた勝ち点53。現在は36で、このままのペースだと達成が難しいということだ。
ただ、「53」という数字は、昨年、一昨年のデータを見れば4位~6位が獲得していた勝ち点だ。現在はまだ4位にとどまっていることからも、かなり早目に手を打ってきたと言える。だが、目標未達成を防ぐというフロントの説明は、どうも表向きの理由のように聞こえてしまうのだ。

 解任劇を伝える新聞報道には気になる指摘が見られた。
「戦術などをめぐって選手とベルデニック監督の間に溝が深まっていた」(8月12日付 スポニチ)、「監督、コーチの中で戦術観、サッカー観の相違が生まれていた」(同日付 日刊スポーツ)などと指揮官のチームマネジメントがうまくいってないことをうかがわせている。監督の求心力が落ち、それによる最近の低迷を踏まえたうえでやむなく解任に至った、ということなのだろうか。

 確かに指揮官を支えてきた小倉勉ヘッドコーチが7月のタイミングでテクニカルダイレクターに就任してフロントに回るなど、好調の裏でチームに変化が訪れていたことは間違いなかった。これまでベルデニックのサッカー哲学を小倉コーチがうまくチームに落とし込んできたという印象を持っていただけに、この2人を含めてチーム内に「戦術観、サッカー観の相違」が生まれてしまっていたとしたら変化は決して小さなものではなかったはずだ。夏場に入って急に失速してしまったのは、ケガ人が多いという事情ばかりでなく、そういった体制の変化も無関係ではないと思える。

 しかし、である。昨年から築いてきたベルデニックのサッカーが、大宮にフィットしたことは紛れもない事実だ。組織的な守備からカウンターで相手ゴールを陥れる。決して一過性の強さでないことは不敗記録が証明している。過去J1での最高位が12位で、戦力的に層が厚いとは言えない大宮をトップ争いに食い込ませてきた指揮官の手腕は、評価されて然るべきだ。「下位クラブ」からの脱却を図っている途中で、功労者を手放してしまうことがクラブにとって本当にプラスになるのか。たとえ新聞報道のような事情があったにしても、この不幸な事態を何とか回避できなかったのか、というのが筆者の率直な感想である。