TBSのドラマ「半沢直樹」(日曜日、21時から)が大評判だ。8月11日に放映された第5話では、29%(ビデオリサーチ調べ。関東29%、関西29.5%)もの高視聴率を叩きだしたという。
主人公の堺雅人の演技力と、人物設定の面白さがヒットの原因だろうが、このドラマは「銀行」を舞台としており、銀行の組織、銀行員の仕事と生活が詳細に描かれている。
人事が命の次に大事だったり、形式張った会議が多かったり、旦那の役職が奥さんの人間関係にも影響したりといったサラリーマン経験のない視聴者から見ると、非人間的で「奇妙な職場」に見えるかも知れないが、概ね実際の銀行と銀行員がリアルに表現されているといっていい。
このドラマを見て、「銀行で働くなんて、とんでもない」と思う若者がいてももちろんおかしくないが、一定割合の若者は、かえって銀行を志望するようになるのではないだろうか。ある種の若者は、ドラマ中の銀行員達が露骨に示す組織へのプライドを自分も所有したいと思うはずだからである。
筆者は、仕事柄、就職前の大学生と接触する機会が時々あるが、就職希望について問うと、「金融を考えています。たとえば、銀行とか」と答える学生が少なくない。銀行に就職できると、親や親戚からの評価はもちろん、仲間内の評価も概ね高いようだ。
しかし、就活の勝利と、職業人生の成功とが、必ず結びつくとは限らない。端的にいって、銀行に不向きな人が銀行に就職すると、人生で回り道をすることになったり、潜在的な力を発揮できずに人生を終えたりする心配がある。
他方、社会に銀行というビジネスが必要であることは疑いようがない。誰かが、銀行で働いてくれなければ困る。
銀行員には以下のようなタイプが向いている。
(1) 勉強が嫌いでないこと
(2) ストレスに強いこと
(3) 肩書きが好きであること
金融業全般にいえることでもあるが、特に銀行では、融資先の業界や企業について調べる必要があるし、新しい制度や商品、金融市場などについて、継続的に知識を仕入れて仕事をする必要がある。
学ぶべき対象は、経済、法律である場合もあるし、担当する業務によっては技術的な知識が必要な場合もある。また、銀行は書類をベースに仕事が進むので、書類作成が苦にならない文章力や表現力が必要だ。端的にいって、記述式の試験答案を書くのに苦労するような学生が銀行に就職すると苦労する。
学校の勉強が直接役に立つ訳ではないが、成績は一つの目処になる。学業成績の悪い学生は、銀行を目指さない方がいい。
ストレスに強いことは、どの職場でも重要だが、銀行に於いては格段に重要だ。お金を扱う仕事なので、顧客の理不尽、上司の理不尽に耐えつつ、安定して仕事をこなさなければならないし、組織の締め付けは厳しい。人事評価が一生にわたって影響するので、特に、上司に逆らうことは難しい。