藤重貞慶 第1回 「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

人生の醍醐味は、やっぱり素敵な出会いである。数年前のこと、ライオンの藤重貞慶社長が自らわたしに直当たりしてきた。わたしの処女作『甘い生活』を読んで、その著者に会いたくなったそうだ。いまなら誰でも、土・日・祝日は新宿伊勢丹のサロン・ド・シマジで"生シマジ"に簡単に会えるのだが、当時のわたしは雲に隠れた存在だった。

「シマジさんのエッセイはユーモアとエスプリに富んでいます。それに日本人ばなれしていてハイカラです」と、会った瞬間藤重社長からお褒めの言葉をいただいた。うれしくなったわたしは広尾のサロン・ド・シマジ本店に彼をご招待した。

話は尽きず宴は深夜まで続いた。それからときどき二人だけで、また、ときには他の方を交えての酒席を持っていただいている。皆いろんな業界の一流の方ばかりだ。

いま、藤重社長は後進に社長の座を譲り、会長になっている。その人望たるやもの凄い。ある日たまたま銀座の焼き鳥屋「鳥政」のカウンターに座っていたら、隣の紳士が「シマジ先生!」と声をかけてきた。

その紳士は「わたしは藤重の下で働いている神野伸一と申します。藤重の推薦でシマジ先生のご著書や雑誌やネットの連載はすべて読んでおります。この店もシマジ先生のご本で知ってやってきました」といって名刺をくださった。わたしは改めて藤重会長の影響力に驚き、またまたうれしくなった。