古賀茂明「福島第一原発の汚染水の海洋流出問題」「アフラックと日本郵政」

1.福島第一原発の汚染水の海洋流出問題

●その1:「何を今頃」という声

福島第一原発の汚染水が大量に海に漏出していることをようやく東電や政府が認めた。

漏出の可能性については、震災直後の2011年4月頃から専門家によって指摘されていた。これを防ぐために、とりあえず、10万トン級のタンカーを原発の近くに停泊させて、そこに高濃度の汚染水を貯留するというアイデアや、水による冷却を止めて石棺で覆ってしまう方式などが2年以上前から提案されていた。

私が最も信頼している原子力コンサルタントの佐藤暁氏もその一人だ。佐藤氏は、GEに勤務していた当時、福島第一原発の建設に携わり、その後も日本の原発の多くに関与してきた専門家である。佐藤氏は、吉田昌郎福島第一原発所長とも親交が厚く、事故後も吉田氏から何回もアドバイスを求められたそうだ。当時の吉田所長の最大の関心事は、この汚染水問題だったという。

吉田氏は、大量の水を流し込んで冷却を続けても、その処理の当てがないこと、早晩海洋への流出が始まることを真剣に心配し、佐藤氏に、水冷方式以外の処理方法を一緒に考えて欲しいと依頼していたそうだ。しかし、吉田氏は、その思いとは裏腹に、日々の事故収束作業に追われるうちに癌を発病して現場を離れ、去る7月9日に亡くなられた。きっと、闘病中も、汚染水処理に後手後手の対策しかとれない東電の対応に歯がゆい思いを抱いていたに違いない。天国から、「何を今頃になって。とっくの昔にわかっていたじゃないか」と言っているような気がしてならない。

●その2:選挙直後に公表したわけ

東電は、汚染水の海洋流出がほぼ確実だということを示すデータをかなり早い段階から持っていたにもかかわらず、それを認めたくないので、いろいろな理由をつけて公表を遅らせてきた。不確定な段階でも、どんどんデータを公表していれば、世界中の専門家から知恵を集めて、その分析や対策の議論が進んだはずなのに、これを隠し続けるという大失態を演じた。

特に、社長にまで上がった後も、その発表を参議院選挙翌日まで延ばしたことが問題視されている。参院選で原発推進の安倍自民党に悪影響が出ないようにということで、発表を遅らせたと疑われても全く反論できないだろう。

もし、これを投票日直前に公表して、自民党の議席数が少しでも下がったというような評価を受けたら、東電が今最重要課題と位置づける、柏崎刈羽原発の再稼動に安倍政権の後押しを期待できなくなる、ということを心配したのではないかと疑われているのだ。

●その3:汚染水が溢れるわけ

地下水が海に漏れ出してはいけないということで、東電は今、海側の岸壁沿いの地中深くまで遮水壁を作っている。海の中の堤防の下にも建設中だという。

しかし、ここで地下水をせき止めると、当然行き場を失った汚染水が徐々に溜まって、その水位が上がる。そして、その水位がついに遮水壁の高さを超える状況になったので、この先は、遮水壁を超えてどんどん海に流出することになる。

●その4:良く考えたら、前から漏れていたということ

それで、マスコミは大騒ぎをしているわけだが、遮水壁を作ったら汚染水が溢れ始めたということは、遮水壁を作る前は、溜まるはずの水がどこかへ行っていたということだ。どこに行ったのかと言えば、もちろん、海しかない。

つまり、何のことはない、もっと前から汚染水は海に流れていたというのは、どんなに鈍感な人間でもわかるはずだ。

東電は、民間企業として、その生き残りを最優先してしまう傾向が強い。おそらく、汚染水が漏れ出ている可能性が高いことはよくわかった上で、それを放置した方が汚染水の量が減少し、処理費用が小さくなるので、経営上は得になるという判断を暗黙のうちにしてしまったのだろう。だから、漏れているのではないかという方向での調査を行わず、漏れているということを認めないように認めないようにという形で調査をし、また、それをずるずると先延ばししてしまったのだと思う。今後は、企業の陥りがちな罠というものを前提に政府は対応を図る必要がある。

●その5:経産省の責任

何故、こういうことが起きたのかと言えば、事故当初から、東電の生き残りを最優先してきた経産省の責任が大きい。今頃になって、国が前面に出て対応すると安倍総理は胸を張ったが、何か重大な勘違いをしているのではないか。

最初に、東電は絶対に破綻させないという方針を作ったのは、経産省だ。これを民主党政権は、当初、それでは立ち行かないとわかりながら、経産省の圧力に屈してこの方針を政府の方針にしてしまった。

20011年3月末に東電に3メガバンクから2兆円近い緊急融資をさせたのも経産省だ。経産省は、天下り先の銀行への配慮もあり、幹部は、絶対に東電を潰すなと言明していたそうだ。

その後、経産省の現場や経産省職員が出向した内閣府などにおける様々な政策検討の場では、常に東電の経営問題を最優先させて政策を作っていたという話を官僚たちが証言している。損害賠償の基準を作っていた時も、どういう基準にするといくらかかるのかということを計算しては、何とか賠償額を小さくする方策はないかという検討がされていたそうだ。

今、原子炉の回りの遮水壁に凍土方式という聞きなれないやり方が採用された最大の理由は、やはり、そのほうが安いということだと、担当部局の関係者がマスコミに話している。除染でも、二次除染は認めないなど、全く住民の健康や生活のことを無視した対応が続いているが、これもひとえに東電を破綻させられないという配慮なのだから、経産省という役所は、本当に罪深い。・・・・・・

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