中国
「中国夢」とは何なのか---北京オリンピック5周年記念日に考える経済発展の光と影
〔PHOTO〕gettyimages

「同一个世界、同一个夢想」(同じ一つの世界、同じ一つの夢)---2008年8月8日夜8時8分、中国人が一番好む末広がりの8の数字を、五輪に合わせて5つ並べた時間帯に、胡錦濤主席がこのスローガンを高らかに唱えて開会した、北京オリンピック。

あの興奮のビッグ・イベントから、丸5年が経過した。中国にとって、北京オリンピックとは一体、何だったのか。私は5周年の記念日に、北京オリンピックのメイン・スタジアム、通称「鳥巣」(ニアオチャオ)の前に立って考えてみた。

高級レストランや高級ホテルはどこも閑古鳥

何と言っても今日は、「中国13億人の夢の祭典」と喧伝していた北京オリンピックから5周年である。当然、地元北京や中国各地から5周年を慶ぶ人たちが駆けつけて、「鳥巣」はお祭り騒ぎになっていると思っていた。

だが、正門南手の国家体育場南路に感慨深げに立っているのは、はるばる日本からやって来た私一人ではないか。気温34度の猛暑のせいか、道往く人も疎らで、彼らとて、懐かしげに眼前の「鳥巣」を仰ぎ見ることさえしない。いくら「人走茶涼」(人が去れば茶は冷める)と揶揄される中国社会とはいえ、あんまりではないか。

周囲を見渡すと、オリンピックの前後に何度も地上げされて、いまや1㎡あたり10万元(約157万円)もする超高級マンション群が聳え立っている。その一角にある「鳥巣」東脇の有名な高級広東料理店「阿亮蟹宴鮑翅楼」は、当時は中国の金持ちたちが押しかけていたのに、この日は閑古鳥が鳴いていた。

私はこの店に、2010年春、ある北京有数の富豪から案内されたことがあった。アワビ、フカヒレ、燕の巣・・・と、お大尽のような料理の数々に「五糧華冠」(マオタイと並ぶ高級白酒)まで出された。彼は5万8000元(約91万円)もの代金を、銀聯のゴールドカードで平然と支払っていたのを記憶している。

そんな思い出もすっかり、いまは昔である。その後、「鳥巣」の北側も回ってみた。北側には、田舎から出て来た観光客らしき一群が散見された。だが、オリンピック公園内に君臨する「北京北辰洲際酒店」(インターコンチネンタルホテル)も、ロビーを見渡すと、宿泊客がほとんどいないようで、ホテルの従業員たちは、ヒマを持て余していた。

聞くと、1泊1120元(約1万7500円)まで割引するという。5年前は1泊5万円近く取っていたので、落ちぶれたものだ。このホテルの2階にあるイタリアン・レストラン「意秀」にも、何度かランチ時に行ったことがあるが、不味いランチセットが一人あたり300元(約4700円)もしたものだ。いまは70元(約1100円)で食べられる。

オリンピック5周年の、このシラケきった様はどうしたのだろう? 当時、北京オリンピックの外交の事務方責任者だった外交官が知り合いで、オリンピック終了後、彼とこのホテルの1階の喫茶店で会ったことがあった。私が「北京オリンピックの成果とは何か?」と聞いたところ、彼は次のように答えたものだ。

「それは、アメリカに次ぐ38枚もの金メダルを獲得できたことではない。オリンピックという世界的イベントを成功裏に成し遂げたことで、われわれもアメリカと同様に世界で伍していけるという自信をつけたことだ。それまでわれわれ中国人は、強烈なアメリカ・コンプレックスを持っていたが、これからはもうアメリカを恐れることはない」

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