「縮小に向かう社会」構想が注目
東京移管120年 「成長」を象徴した地域の再生ビジョン[多摩]

成長」の象徴だった多摩ニュータウン=東京都八王子市で10年10月19日

 1300万人が住む東京都の人口の3分の1を抱える多摩地域。今年は多摩地域が神奈川県から東京に移管されて120年目の節目を迎える。都が3月に発表した2030年ごろの姿を描いた「新たな多摩のビジョン」は、これまでの経済成長を前提にした地域の発展を前提とした計画から一転し、初めて「縮小に向かう社会」のあり方を提言したものとして注目を集めている。

 新ビジョンはまず、人口減少社会の到来と急激に進む高齢化への危機を明言している。

 多摩地域の人口は区部に先行して15年の約419万人をピークに減少を迎え、30年には399万人、2100年には250万人に減少すると推計している(区部は20年の916万人をピークに減少)。生産年齢人口の減少も続き、30年には10年の279万人から約1割減の243万人になり、その後も減少が続くとしている。65歳以上の高齢化率も30年には28%程度にまで増加、75歳以上の後期高齢者の割合は約17%となり、その後も上昇し続けるとしている。

 特に注目すべきは1人暮らしの高齢者の増加で10年の約16万世帯から30年には26万世帯へと増加し、全体に占める割合も14%程度にまで上昇する。

 この結果、人口減少、少子高齢化の進展による行政需要の増大が見込まれ、一方で生産年齢人口の減少などで、税収増を見込むことができずに、各自治体とも厳しい財政環境に陥るとの懸念を表明している。

 こうした縮小に向かう社会を前提に、新ビジョンは「『右肩上がりの成長・拡大』から『活力ある都市の成熟・持続』への発想の転換」の必要性を訴えている。

 多摩地域は1893(明治26)年に西多摩、南多摩、北多摩の3郡が神奈川県から東京府に移管され、今年でちょうど120年を迎えた。現在は26市3町1村の計30自治体で構成されている。

「これまでの多摩地域は、それぞれが同じ箱物を作って競い合うなど、相互に連携を取るという発想が希薄だった」(都幹部)との声が強かった。縮小に向かう社会では一つの地域単体では地域の形成や発展の担い手が不足し、現行の行政サービス水準の維持すら難しくなる可能性も出てくる。

 そこで新ビジョンは、自治体間の連携はもとより、企業・事業者(NPOなどを含む)、自治会・町会、ボランティア団体などのさまざまな活動主体が、これまでの活動範囲や行政の垣根を越えて、重層的・複合的な連携を図ることが重要だと訴えている。

 具体的には大学や研究機関が集積する多摩地域で、地域の自治体や住民などと連携を図り、特産品の開発や販路ルートを開拓したり、企業を退職した元気な高齢者と若者が連携した事業化を支援することなどで、新たな事業展開が期待できるとしている。

 さらに自治体にも、これまでの競い合う関係から、相互に補完し合う関係へと転換していくことを強く求めている。

 例えば、公共施設ひとつとってみても、運営・管理のほか、今後、老朽化による建て替え・補修問題がつきまとうが、ほかの自治体との施設の相互利用の促進や、厳しい財政事情を考慮し、施設総量の縮減なども必要な措置との考えを示している。

 すでに可燃ごみなどの共同処理を実施している一部事務組合などは広域連携の先行事例とされているが、可燃ごみ処理以外にも積極的な取り組みが必要だとしている。そして、将来的な市町村再編の検討の必要性にも言及している。

9月に都内2度目の国体開催

多摩の魅力発信プロジェクトロゴ

 節目の年に合わせて多摩地域を中心に9月28日から都内で2度目となる第68回国民体育大会「スポーツ祭東京2013」が開催される(10月8日まで。その後10月12日から14日まで第13回全国障害者スポーツ大会が開催)。

 多摩地域では30自治体が実行委員会を立ち上げ準備を進めているが、将来に向けての広域連携の可能性が試される大会でもあるとも言える。

 また、都総務局は今年5月に「多摩の魅力発信プロジェクト」(略称・たま発!)=ロゴ写真=をスタートさせた。多摩地域の自治体をはじめ、さまざまな主体と連携、協働し、産業、文化、スポーツなどを多摩地域の住民が自ら再発見して、イベントなどを通じて発信していくという取り組みだ。まだ全てのイベントの詳細は固まっていないが、新ビジョンの目指す提案を先取りした形のプロジェクトだ。

 まず都総務局振興企画課が開設した「たま発!」の特設ホームページに、その特徴が示されている。30自治体に及ぶ各地の情報を一覧で紹介できるような工夫を凝らしている。さらに、各イベントでは共通のロゴを使用し、一体感を持たせたキャンペーンを展開する。

 振興企画課幹部は「各自治体は気付いていても、自らが手を挙げて連携を取り始めるのは難しい。このキャンペーンでお互いの顔が見えるリレーショナルを築いてほしい」と語る。

 メインイベントは8月24、25の両日、国営昭和記念公園(立川市、昭島市)の「多摩フェスティバル」。ほかにも夏休み宝探しチャレンジ▽自然体験プログラム▽マルシェ(出張市場)▽フォトコンテスト――などのイベントが行われる予定だ。

 大きな転換点を迎えた多摩地域は、同じく縮小社会に向かう課題を抱える他自治体の参考となりうるのか。いろいろな意味で大きな節目を迎えている。

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