進まない地方管理の橋の修繕
実施率はわずか15% 予算と職員の不足が要因[インフラ]

老朽化のため昨年通行止めなった東京都江東区の三石橋。来年4月の開通に向けて架け替え工事が進む=7月10日

 全国の都道府県や市町村が管理する全国の長さ15メートル以上の道路橋のうち、点検で必要とされた修繕を実施した割合が約15%にとどまることが、国土交通省の調査で明らかになった。特に市町村管理分では、約5%しか実施できていないという。背景には、自治体の予算や技術職員の不足などがある。国は6年前から点検計画を立てて予防的に修繕するよう求めてきたが、依然として進んでいない厳しい現状が改めて浮き彫りになった。

 国交省は、都道府県や市区町村などが管理する長さ15メートル以上の道路橋14万3763本を対象に、今年4月時点の状況を集計した。それによると、全国の自治体が管理する主な道路橋のうち、老朽化などで補修が計画されている橋は昨年4月時点で6万704本(都道府県3万3528本、市区町村2万7176本)だったのが、今年4月時点で6万8800本(都道府県3万1840本、市区町村3万6960本)に増えていた。これは全体の47・8%に当たる数だ。

 修繕が実施された道路橋は昨年4月時点の6476本(都道府県5593本、市区町村883本)から、今年4月には1万42本(都道府県8291本、市区町村1751本)に増えたものの、修繕の実施率は14・6%にとどまっている。このうち市区町村管理の橋で修繕が施されたのはわずか1751で、実施率は4・7%という低さだった。

 また、自治体による「長寿命化修繕計画」の策定状況をみると、今年4月時点で、都道府県98%(前年同期98%)、市区町村79%(同51%)となっており、市区町村の策定率は上がっているが、依然として自治体からは「予算と技術職の要員が足りず、修繕が計画通りに進まない」などの声が上がっているという。

 老朽化による通行止めなどの通行規制が実施されている橋の数も今年4月時点で1381本となり、昨年(1379本)と表面上は横バイだった。しかし、昨年4月時点から修繕して通行規制が解除された道路橋が114本あったものの、新たに通行規制がかけられた橋はこの1年間に116本増えた。通行規制数の1381本は、5年前の約1・7倍の数だ。

20年後に50%超の橋が老朽化

 国内の道路橋は高度成長期の1960~70年代に集中的に造られている。国交省によると、崩壊時に被害が大きいと予想される長さ15メートル以上の橋は、国管理も含めると全国に約16万本あり、そのうち老朽化しているとされる築50年以上の橋が占める割合は11年に9%だったのが10年後には28%に、20年後には53%へと急増するという。

 このため、国交省は07年に米国ミネソタ州で築40年の高速道路の橋が落下し、多数の死傷者が出たころから、自治体に計画的な点検や修繕を求めてきた。

 15メートル超の橋のうち、国管理の国道の約2万本は、専用の点検車を使うなどの方法で定期点検が実施されており、早期の補修などで修繕も進んでいる。だが、それ以外の橋を管理する自治体の多くは、道路の点検時に目で見て異常がないか確認したり、住民から通報があれば対処したりする程度の検査状況という。

 同省は「交付金の支給や人員の派遣など、財政・技術面の支援を急ぎ、自治体に速やかな対応を促したい」としている。

 実際に地方の道路橋はどうなっているのか。

 大阪府では、府が管理する長さ15メートル以上の橋852本のうち、築30年以上が6割超の約550本を占め、早期補修が急務という。府は10年度に約20億円だった橋の管理・修繕費を段階的に増やし、今年度は約36億円を計上。橋脚については、5年に1回の定期点検で結果を点数化し、100点中70点未満だった場合、修繕すると定めている。昨年4月時点で修繕対象は188本で、これまでに修繕が完了したのは55本にとどまっている。今年度中に56本が着手予定だが、対象の4割にあたる77本は着工のめどが立っていない。府道路環境課は「優先度の高いものから補修を進めている」と話す。

 また、東海3県の市町村の点検実施率は、愛知県94%▽三重県97%▽岐阜県85%――となっている。このうちすでに点検を終えている岐阜県の安八町は、町内の主な橋11本について今後修繕を行うという。点検は主に国の補助金に頼り、外部委託で実施した。しかし予算などの制約から「小規模な橋の点検などは、まだ手つかずの状態」と話している。

 国交省は昨年度から、インフラ整備のための交付金について、自治体に「修繕に使いたい」と要望されれば優先的に配分することを決めた。

 また5月には、国が自治体に代わって老朽化した地方道の橋やトンネルを改修できるようにする改正道路法が成立した。昨年の中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故を受けた対策の一環で、技術職員が足りずに進んでいない改修を支援するのが狙いだ。対象は、複雑な構造で自治体の対応が難しい施設に限定するという。

 地方道は原則として自治体が管理し改修する。改正道路法では、国が都道府県や市町村から要請を受けた場合、工事の緊急性や自治体の技術力から代行するかどうかを判断。代行が決まれば、国交省の地方整備局などが改修計画の作成から工事の発注、監督、完了検査まで実施する。費用の国、地方の負担割合は自治体が自ら実施する場合と変わらず、国が55~70%、残りが自治体となるという。

 改正法はこのほか、橋脚や路面の劣化を早める過積載違反の取り締まりを強化するため、道路管理者の国や自治体が、違反を繰り返す運送業者に立ち入り検査できるようにした。同省の担当者は「笹子トンネルの事故もあって、老朽インフラへの不安は急速に高まっている。支援策も使って早めの点検や修繕をしてもらいたい」と呼び掛けている。

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