【財務 その3】 聖域なき歳出改革を1 (社会保障)
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日本は非常に厳しい財政状況にも拘わらず、社会保障に多額な国費を投じてきた。これまで、小泉改革を唯一の例外として、財政再建の努力は社会保障「以外」の分野でのみ、行われて来た。その結果、教育や科学技術、子ども等への将来投資には十分な国費を回す事が出来なかった。

未来を担う子供達に良い日本を引き継ぐためにも、この異常な状態を一刻も早く止めなければならない。今すぐに社会保障費の削減に切り込まなければ、財政再建は行えず、未来への投資が行えなくなる。

社会保障費の削減は、当然ながら痛みを伴う。しかし、歳出改革の本丸は、社会保障費の削減であると言えよう。避けては通れない。

数字を分析してみよう。社会保障給付にかかる費用は、毎年1兆円規模で増加し、2009年で約110兆円となっている。このうち、国費負担は、約30兆円であり、GDPの6%、一般会計の30%を占める。

内訳は、医療費が、年間約42兆円(うち公費負担が約16兆円)、年金が、約54兆円(うち公費負担が約12兆円)。生活保護に、年間約4兆円(全額が公費負担)、介護に、年間約9兆円(うち公費負担が約4兆円)となっている。

全ての分野で、国費負担が尋常でない程の規模になっている。本稿では、医療、年金、生活保護、介護の各分野に関して、社会保障費削減のための方策を大胆に提言していく。基本的には、医療保険、年金、介護保険は、保険料で自律的に賄える方向に持っていくのが望ましいと考えている。

1. 医療

最新の2013年の国民医療費は、予算ベースで年間41.8兆円にも及ぶ。医療費の財源内訳をみると、保険料が48.5%(約20兆円)、患者の自己負担が13.4%(約5兆円)、公費負担が38.1%(約16兆円)だ。

現在でも国民医療費は巨大な額だが、厚労省の推計では、これが2025年には54兆円までふくれあがると予想されている。

その医療費の費用構造の内訳を見ると、医師等の人件費が47.9%と約半分を占め、医薬品が22.2%(約9兆円)となっている。

医療費の総額は、単純化すれば「価格(P)×数(Q)」で決まるわけだ。

(1)医療費の価格(P)の削減/後発医療品の使用を義務化せよ

診療報酬の内訳で最大のものは、医師等の人件費だ。地方を中心に医師のなり手が少なく、地方の病院崩壊や救急車のたらい回しが、以前大きな社会問題となった。それらの問題が診療報酬のプラス改定によって、ある程度改善の方向に向かったことを考えれば、医師の人件費に関しては、特に病院の勤務医や救急医療に関しての配慮が必要であろう。

一方で、毎年約9兆円が使われている医薬品に関しては、医療費削減の余地が大きいのではないか。日本では、後発医療品、いわゆるジェネリック薬品が使われるのは、全体の約40%に過ぎない。厚労省は、これを5年後に60%以上にすることを目標としているが、低すぎはしないか。諸外国での後発医薬品のシェアは、アメリカで約90%、イギリスで約70%、ドイツで約80%などだ。

仮に、後発品がある医薬品を全て後発医薬品に置き換えた場合、医療費総額で1兆5300億円の削減となる(そのうち公費は約5800億円)。例えば、フランスでは、一部の医薬品の償還額は後発医薬品を基に設定され、それを上回る部分については患者負担となっている。

日本でも、後発品のある医薬品の診療報酬上の薬価については、後発医薬品を基に設定し、患者が先発品を望む場合は、上回る部分については自己負担とすることで、後発医療品の使用を事実上義務化すべきだ。

(2)自己負担比率の引き上げを

次に、医療の個数(Q)を抑える方策だ。医療にかかった場合の患者の自己負担は、現在、70歳以下が3割、70歳~74歳が法律上2割、75歳以上が1割となっている。しかし、現状では、70歳~74歳の患者負担について、毎年度約2000億円の予算措置を行っており、1割負担に凍結している。これについては、早急に法律上の自己負担率である、2割に戻すことが必要だろう。

加えて、なるべく医者にかからないようなインセンティブを国民に与える観点で、中長期的には自己負担比率を一律で3割負担とするといった、自己負担比率の更なる引き上げが必要であろう。年齢に応じて負担額を減らす発想を改め、何歳であろうが30%の自己負担とするのが、シンプルで望ましい。当然、生活保護受給者にも同様に、30%自己負担を求めるのが自然な発想であろう。

(3)医療サービスの利用実績に応じた保険料制度の導入を

医療の個数(Q)を抑えるには、上記の自己負担比率の引き上げに加えて、私たち国民がなるべく医療サービスを使用せずに健康を維持するインセンティブが必要だ。それには、国民健康保険の保険料に関して、民間の保険と同様に、医療費を多く使った場合には、次の年の保険料が引き上がる、といった仕組みの導入を検討すべきだろう。こういった制度改正によって、医療の個数(Q)を抑えるインセンティブが国民に与えられるようになる。

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