「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第13回】 苦境に落ちつつあるブラジル経済

〔PHOTO〕gettyimages

このところ、中国経済の成長鈍化が白日の下に晒されつつある。昨年まで中国経済を賞賛していたエコノミストは一転、不動産等の「バブル」崩壊を懸念し始めている。筆者はリーマンショック直後から、欧州の景気失速の後は、中国を中心とした新興国ブームの終焉が来るのではないかと考えていた(詳しくは2009年3月に発売された拙著『恐慌脱出』(東洋経済新報社)を参照のこと)。

資本主義が誕生して以来の長い歴史を振り返ると、我々は、新興国の高成長を梃子にした「グローバリゼーション」の大きな局面を、(1)イギリス産業革命が軌道に乗った後、安価な労働力や原材料を求めてイギリス企業が海外へ進出した1800年代半ば頃(イギリスが「世界の工場」の地位から転落する局面)、(2)金本位制が比較的うまく機能していた戦間期、(3)そして、今回の2005年以降、と、少なくとも3回経験した(もっと細かく分類できるかもしれない)。その度に先進国は新興国の高成長の脅威を受けてきた。

しかし、当時の「新興国」の多くが、いまだに「新興国」として「次の世界経済の主役」としてもてはやされている。その代表格がブラジルである。戦前もブラジルは、将来有望な「新興経済圏」としてもてはやされてきた。そして、希望を胸に多くの移民が新天地を求め、ブラジルへ渡った(日本もその例外ではなかった)。だが、これまで、ブラジルは先進国の仲間入りを果たせずにいる。つまり、今、次の世界経済の主役として期待されている新興国の多くは、むかしから「新興国」のままであり、「先進国」にテイクオフすることができないでいる。

これには、なんらかの「構造的問題」が存在すると思われるが、かつての「新興国」が「先進国」の仲間入りを果たせなかった教訓を踏まえると、今回の新興国ブームも結局は終わりを告げるのではないかと懸念する。そして、現に、今回の「グローバリゼーション」の局面でもいわゆる「BRICs」の一角として、将来有望な一大経済圏として膨大な額の「マネー」を集めてきたブラジル経済にも動揺が広がっている。

中国経済の減速と軌を一にして輸出の減少が顕著に

ところで、2013年1-3月期のブラジルの実質GDP成長率は前期比年率で+2.8%、2%台の実質成長は2011年4-6月期以来だったが、このところのブラジルの実質経済成長率の平均は年率で1%程度と、「新興経済圏」のイメージとはかけ離れた低成長が続いている。

ブラジルが低成長に甘んじている理由はいくつか考えられる。第一の要因は、中国の成長減速の影響で資源価格が下落したことである。これが、資源輸出国であるブラジルの輸出を減少傾向にまで低迷させている。2012年のブラジルの輸出金額は前年比-5.3%の減少だったが、今年も1-6月の集計値では前年比-2.3%である。仮に2年連続の輸出減となった場合、これは、1998、99年以来のことである。

輸出の減少は2012年半ばあたりから顕著になってきた。これは、中国経済の減速が顕著になってきたタイミング(例えば、PMIの低下など)とほぼ軌を一にしている。さらに、米国でのシェールガス採掘量の拡大が重なってきた可能性がある。他国については、次回以降に機会を譲りたいが、世界の主要産油国の原油輸出額は軒並み減少に転じており、世界の貿易収支の構造を変えつつある(とはいえ、シェールガスの採掘量拡大が米国の貿易赤字を減少させている訳ではない)。

加えて、これまでブラジルの高成長のポテンシャルに賭けてきた世界の投資マネーが逃避し始めた可能性がある。ブラジルの経常収支赤字は拡大しつづけており、経常収支赤字は資本収支の黒字(すなわち、ブラジル国内への資金流入)によって相殺されているはずだが、最近は、これは、海外資金の流入ではなく、ブラジル政府が保有する外貨準備が国内に流入することによってかろうじて経常収支赤字を相殺している可能性が高い。直近(6月)のブラジルの外貨準備は3,694億ドルだったが、これはピークから3%弱の減少となっている。

この外貨準備の減少は、ブラジルの通貨当局がレアル買い・他国通貨(例えばドル)売りの為替介入を実施していることを意味する。すなわち、ブラジル通貨当局はレアル安を阻止すべく、自国通貨を市場から購入しているのである。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら