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孫正義氏が大激怒した電波問題の根深さ

2013年08月18日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

電波周波数の割り当てを巡って、ソフトバンクの孫正義社長が大激怒している。

KDDI系の高速データ通信会社UQコミュニケーションズとソフトバンク系のワイヤレスシティプランニング(WCP)が電波割り当ての申請を行っていたが、総務省はUQに決定。孫社長はこれに対して、「出来レース」「癒着」などと舌鋒鋭く批判している。

孫社長の主張は、電波割り当てのプロセスに問題があるというもの。割り当て先が事前に新聞にリークされたり、審議会が形骸化して「出来レース」になっている。さらに、UQやKDDIに総務省からの「天下り」がいて、「癒着」があると疑いたくなるという。

実際、KDDIには中田睦氏(1977年郵政省入省)、UQには鬼頭達男氏(1973年郵政省入省)の〝元官僚〟がいる。彼らの役職は、「渉外担当」であり、総務省とのパイプ役というわけだ。

携帯電話やデジタル放送などに必要不可欠な電波は国民の公共財産なので、総務省が管理し、事業者に割り当てている。一方で、スマートフォンの登場によって大量データ通信の時代に突入、電波の確保は通信事業者にとって死活問題となっている。こうした役所と規制業種の関係は、かつては霞が関のどこの役所でもよく見られた。

たとえば、規制金利に守られていた銀行業界では、店舗数が銀行の収益を決めていた時代がある。その時代には、店舗の設置を当時の大蔵省に認めてもらえるかが銀行の収益を左右した。銀行は「大蔵省担当(通称MOF担)」が大蔵省官僚に接触し、情報入手。また、銀行に顧問として天下りポストを作り、その顧問が大蔵省官僚に接触していた。

今回問題になっている総務省の電波割り当ても、こうした霞が関と規制業種の関係と同じとみると理解しやすい。ただし、孫社長の主張は現行の割当制度を前提としたものであり、そこに本質的な問題がある。

実は孫社長も電波割り当ての恩恵を受けている。イー・アクセスが昨年6月に電波割り当てを受け、今年1月に同社をソフトバンクが傘下にした。そのため、ソフトバンクは割当制度によって電波周波数を得ているともいえる。

こうした経緯を指して、ソフトバンクは民主党政権時代に得をした、自民党政権はソフトバンク叩きをするという噂まで語られ始めている。自民党は民主党政権で閣議決定した電波オークションを白紙にして、現行の割当制を維持するようなので、この噂もウソとは言い切れないというのだ。

実は、先進国34ヵ国中、電波オークション(競争入札)を実施していないのは日本を含めて3ヵ国しかなく、31ヵ国では導入済みだ。電波が国民の公共財産である以上、財政法などの趣旨からもオークションは当然のことである。

もちろん電波オークションになると、天下りはなくなり、選定プロセスも透明化され、財政収入も増える。ところが、これに反対するのが、マスコミである。電波オークションが導入されると、数十億円といわれる今のテレビ局の電波利用料が著しく安いことが目に見えてわかってしまうからだ。ちなみに、英米では数千億円の電波オークション収入がある。

テレビ局は電波オークションが実施されると経営問題になる。各新聞もテレビ局を子会社化しているので、電波オークションには触れない。だから、メディアはこの問題を大きくとり上げない。かくも根の深い問題なのである。

『週刊現代』2013年8月17・24日合併号より


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