わかりやすい伝え方の法則
【第6回】 教えるのが上手い人の特長とは

〔PHOTO〕iStockphoto

【第5回】はこちらをご覧ください。

世の中には教えるのが上手い人と、そうでない人がいます。その違いはどこにあると思いますか?

トーク? 知識の深さ? 情熱? いいえ、違います。「相手が何を考えているか」がわかる人です。

教えるのがうまい人は、相手がどこでつまづいているのか、どこを勘違いしているのかがわかります。そこを指摘してあげられるので、結果として「教え方が上手」になるのです。

そして、教えるのが上手くなるかどうかは、相手をどれだけ見ているか、どれだけ相手に関心を持って「この人だったら、こう考えるかもな・・・」と感じ取れるかにかかっているのです。つまり、あなたの内面的な能力ではないのです。

「教え上手」になるためには、あなたの内面を磨くだけでは不十分です。いかに相手のことを思って、相手の考え方を受け入れ、相手がつまづいているところを見つけるかなのです。

生徒を見ていない教師が「教え上手」になれるはずはありません。ずっと黒板に向かって話している大学教授は「教え上手」にはなりえません。いくら机に向かって勉強しても「教える力」は身につきません。

羽生善治さんの『大局観』(角川書店刊)に、「コーチングのこつ」が書かれていました。まさに同じ事を指摘されていらっしゃいます。

「将棋を教えるときに肝心なことは、教わる側は何がわかっていないかを、教える側が素早く察知することだと考えている」(P89)

この指摘は、「将棋を教えるとき」に限りません。誰かに、何かを伝える・説明する・教えるときには、すべて当てはまる重要なことです。

よく「天才は、先生に向かない」といいます。スポーツでも、勉強でも自分がなんでも簡単にできてしまうと、なぜ相手ができないのかがまったく理解できません。だから、教師には向かないのです。つまり、「できる」「知っている」と「教えられる」は違うのです。

教えられる人は、知識が豊富な人でも、それが上手な人でもありません。相手が、どこでつまづき、何が理解できないのかがわかる人、そしてそれを相手が消化できるように加工して伝えられる人なのです。

本来、教職を目指す大学生が「最初に学ぶべきこと」はこれです。一生懸命、知識を詰め込んでも「教えられる人」にはなりません。そもそも、「学ぶ」と「教える」はまったく違う能力なのです。

この違いを知ることは本当に大事です。「教える」「伝える」とは何か? どんな能力が必要なのか? それが教師に一番必要な知識かもしれません。

相手に伝わっていないなと感じた時、自分のトークを磨くのではなく、深い知識を身につけようとするのではなく、まずは相手を見てください。相手に興味を持って接していれば、おのずとその人の頭の中が見えてきます。

それが教える力を上げる第一歩です。

「伝える」のは、「誰に」「何を」が9割

相手にわかりやすく伝える、わかりやすく教えるためには、まず、「誰に」「何を」伝えるのかを明確にしなければなりません。これが、わかりやすく伝えるための第一歩です。「わかりにくい話」になる最大の要因は、この作業をきちんと行わないことにあります。

皆さんにも、経験があると思います。あれこれ話しをするけれども、要するに何を言いたいのかがわからない・・・。そういう人が、みなさんの周りにもいると思います。

なぜ、そうなってしまうのか? 何が言いたいのか本人もわかっていないからです。本人も何が言いたいのかわからないことを、相手に伝えられるはずがないのです。

ではなぜ、自分でもわかっていないのか? それは、きちんと頭の中を整理しないまま、話を始めてしまうからです。

相手に伝える前に、「何が言いたいのか」=「結論」を自分のなかで明確にしなければなりません。そして、話すこと、書くことはすべて「結論」を導くために必要な要素だけに絞ることです。そうすることで、相手は「要するに何が言いたいのか」を迷うことなく理解してくれるのです。

そのときに忘れてはならないのは、「誰に」伝えるのかということです。そもそも、伝える相手が「誰か」によって、「何を」伝えるか(何を伝えるべきか?)は変わってきます。

たとえば、「アベノミクスとは何か?」を説明することを考えます。この時、相手が社会人か、小学生かによって、当然、伝えるべき内容は変わりますね。

社会人が相手であれば、これまでの政策の良し悪しを振り返りつつ、アベノミクスが掲げている「3本の矢」について、具体的な政策を説明するでしょう。しかし、小学生に「アベノミクスでは金融緩和を目玉にしていてね・・・」と言っても理解できるわけがありません。そもそも「金融緩和とは何か?」を理解するために必要な知識をもっていないからです。

ただ、小学生も「手元にお金がたくさんあれば、たくさん買い物ができる」というイメージは持っています。その理解を利用して、「アベノミクスでは世の中のお金を増やそうとしています。お金が増えれば、みんな買い物をするようになって景気がよくなるんです」とアベノミクスの意図を説明することができます。

また、「誰に」には、相手の気持ち・聞く姿勢も含まれます。その相手はノリノリで聞いてくれるのか? それとも時間がなくて集中して聴くことができないのか? それも考えなければいけません。

たとえ同じ人物であっても、状況や話のテーマによって聴く姿勢が変わりますよね。それも含めて「誰に伝えるのか?」なのです。

ものすごく忙しい人に「ではまずアベノミクスが導入されるに至った歴史的背景からご説明しましょう」といったら、「そんなこと、どうでもいい。ポイントだけ教えて!」と言われるでしょう。反対に、みなさんの報告を今か今かと待っている上司に「先日の件、概要だけ伝えますね」と言ったら「詳細を報告しろ!」と怒られてしまいます。

つまり、伝える相手が「誰か」によって、またその人の「姿勢」によって、伝えるべき内容が変わるのです。

このように、常に「誰に」と「何を」はワンセットです。だから、「誰に」「何を」伝えるのか(伝えるべきなのか)を、まずは自分の頭のなかできちんと整理しておかなければいけません。それが伝えるためには必要不可欠なのです。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら