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アマゾン創業者がワシントン・ポストを買収! ジェフ・ベゾスは「大人の道楽」としてジャーナリズムを守る覚悟なのか
Jeff Bezos 〔PHOTO〕gettyimages

米アマゾン・ドット・コムの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾスが米名門紙ワシントン・ポストを買収することになった。5日の買収発表に際し、彼はポストの社員あてに手紙を書いている。次はそこからの引用だ。

〈 ポスト紙の価値観は今後も不変です。ポスト紙はオーナー(社主)の個人的利益を達成するために存在しているのではありません。モットーは読者第一です。 〉

〈 ジャーナリズムは自由な社会を維持するうえで決定的に重要な役割を担っています。特にワシントン・ポストです。アメリカの首都で発行されているのですから。 〉

アメリカを代表するIT(情報技術)起業家であるベゾス。新聞経営の経験が皆無でありながらも、ジャーナリズムに対して深い思い入れがあるのをうかがわせる。80年にわたってポスト紙のオーナーであり続けたグラハム家もそこに注目し、売却先としてベゾスを選んだ。

ジャーナリズムが使命なら株式非公開化

グラハム家出身の現発行人キャサリン・ウェイマスは、ポスト紙とのインタビューに答えてこう語っている。

「もしポスト紙の使命がジャーナリズムであるならば、コスト削減と利益拡大を求められる株式公開企業という経営形態はベストと言えないかもしれません。だとしたら誰かに身売りして株式非公開化です。でも相手は誰でもいいというわけではありません。われわれと価値観を共有し、ジャーナリズムの役割を理解している人でなければ、絶対に売らないつもりでした」

ポスト紙と一心同体と見なされてきたグラハム家にとって、同紙の伝統維持は何よりも重要なのだ。ジャーナリズムに理解を示すデジタル化時代の旗手ベゾスは、新たなオーナーとして最適に見えたのだろう。ちなみに、ベゾスは西海岸に住みながら、東海岸発行のポスト紙のほか高級紙ニューヨーク・タイムズと経済紙ウォールストリート・ジャーナルの両紙を愛読している。

グラハム家の身売りを報じる8月6日の1面記事〔PHOTO〕gettyimages

ポスト紙はもともとは1933年の経営破綻をきっかけにグラハム家所有になり、1971年の株式公開以降もこの構図は変わっていない。株式公開で新しい株主が多数誕生したものの、同家は議決権で優位な種類株「クラスA」を所有し、実質的なオーナーの立場を維持してきたからだ。同家以外の大株主には著名投資家ウォーレン・バフェットもいる(バフェット率いる投資会社バークシャー・ハザウェイはポスト紙を発行するワシントン・ポスト社の株式23%を保有)。

インターネットの台頭を背景にアメリカでは有力新聞社の身売りが相次いでいる。2007年には、経済紙ウォールストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズがメディア王ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーション傘下に入った。これにより、100年以上続いたバンクロフト家による同紙所有に終止符が打たれた。今なおオーナー一族による支配が続く有力紙はニューヨーク・タイムズ紙ぐらいだ。

新聞社の身売りが相次いでいるといっても、グラハム家がポスト紙を手離すというのはメディア関係者にとって衝撃的なニュースだった。同紙はタイムズ紙と並んで名門中の名門と見なされているからだ。

ポスト紙は1970年代、伝説的社主キャサリン・グラハムの下で黄金期を迎えた。ウォーターゲート事件報道でニクソン政権を崩壊に追い込み、調査報道の金字塔を打ち立てている。1976年制作のハリウッド映画『大統領の陰謀』でロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが演じるのは、同事件を追いかけるポスト紙記者だ。

ポスト紙は「CIA(中央情報局)秘密収容所」や「スノーデン事件」で特報を放つなど、今も名声を維持している。とはいえ経営的には急降下している。同紙を発行するポスト社の新聞部門は過去6年間で44%の減収を記録。発行部数は1993年のピークの83万部強から47万部強にまで落ち込んでいる。

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