【財務 その4】 聖域なき歳出改革を2 (社会保障費以外の分野)
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前回の提言において、社会保障費削減の方策について提言した。

歳出改革の本丸は社会保障費の削減だが、当然、それ以外の分野でも行政改革の努力を怠るべきではない。分野別に各論を進めると、文部科学分野、国土交通分野と全ての省庁の所管する行政分野にわたり議論が波及するが、それらの論点については、この後の各行政分野への「行動」において提言を行うこととし、今回は、分野横断的な歳出改革について、提言を進めたい。

1. 独立行政法人の抜本的な見直しを!

独立行政法人という制度は、12年前、2001年の中央省庁改革の一貫として、効率的で国民のニーズにあった行政サービスを提供するといった目的のために創設されたものだ。行政における企画立案部門と実施部門(エージェンシー部門)を分離することで、企画立案部門の能力の向上と、実施部門に法人格を与えて独立させることで業務の効率性と質の向上を図る、という制度趣旨であった。

そのため、独立行政法人には、各省庁から与えられた目標の範囲内で運営面における幅広い裁量権が与えられ、予算も運営交付金として一括交付され、柔軟な執行が可能とされたのだ。

独立行政法人は、制度発足時に国の試験研究機関などが法人化され、その後特殊法人の多くも独立行政法人に移行されて現時点で101の法人数だ。国の財政支出は2兆8960億円となっている。

はたしてこの制度は現在、当初の目的通りに上手く機能していると言えるだろうか。

筆者はそうは思わない。むしろ、大幅な裁量権が与えられたために政府によるガバナンスが効きにくくなり、行政としての透明性も低下していると言えよう。特に、財源の多くが税金であるのに、無駄の排除や業務の効率化が自立的に行われず、財政規律が働かないことは問題だろう。

したがって、独立行政法人の改革にあたっては、法人を2つの分類に分け、

(1)民間で出来るものは民間で行うという方針を徹底し、本来、国が必ずしも行う必要のない業務を行っている法人に関しては、民営化(廃止、もしくは国費による運営交付金の投入を禁止)する。

(2)国が行う必要のある業務を行っている法人については、むしろそのガバナンスを強化し、職員の身分も公務員とし、予算の執行も一括運営交付金ではなく本庁と同様に厳しく査定する(なお、特別会計において財源の根拠がある独立行政法人に関しては、財務6にて詳述する予定)。

といった方針で法人の組織と業務を精査し、改革することが必要だ。

例えば、厚生労働省は、

・国立健康栄養研究所
・労働安全衛生総合研究所
・高齢・障害・求職者雇用支援機構
・福祉医療機構
・国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
・労働政策研究・研修機構
・労働者健康福祉機構
・国立病院機構
・医薬品医療機器総合機構
・医薬基盤研究所
・国立がん研究センター
・国立循環器研究センター
・国立精神・神経医療研究センター
・国立国際医療研究センター
・国立成育医療研究センター
・国立長寿医療研究センター

といった独立行政法人を持つが、国として必要不可欠な医療研究を行う組織を1つに統合し、その他は全て(1)の廃止、もしくは民営化に分類できるだろう。

同じく、文部科学省には、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、国立特別支援教育総合研究所をはじめとする各種研究機関、学術文化系の独立行政法人が23ある。国土交通省には、土木研究所、建築研究所、交通安全環境研究所をはじめとして、20の独立行政法人がある。大幅な整理合理化が可能だ。

これらの独立行政法人は、天下りの温床となりやすい。だからこそポストを維持しておきたいという抵抗が働く。

1つの発想は、理事長や理事の報酬を、無償か少額にすることだ。NPOの理事長や理事が無償奉仕の事例も多い。日本財団は、理事長も理事も無償奉仕だと言う。筆者が理事を務める日本棋院も全て無償奉仕だ。そうなると有能な人が兼務で行うことが多くなるだろう。問題点があるかもしれないが、その分、現場・実務のリーダーに裁量が委ねられ、ガバナンスと執行の分離が進むことが想定できる。

独立行政法人を民営化、廃止し、統合化し、理事長・理事の報酬を著しく下げたら、天下りが無くなり、ガバナンスが働き、かなりの国費が削減できることが予想される。

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