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スモールオーバーラップ 新衝突実験でトヨタ車ほかアノ人気車が最低評価 アメリカで始まった現実に即した試験とその結果に迫る

 昨年から北米で始まった新しい衝突試験の結果は衝撃的なものだった。ベンツのCクラス、アウディA4、レクサスIS、カムリといったプレミアムセダンたちが軒並み「プア」の最低評価。いったいどんな試験なのか?

 昨年からアメリカで始まった『スモールオーバーラップ』衝突の試験は、ドイツ勢が最低評価になるなど、自動車業界に激震を走らせている。いままで衝突安全性はほぼ横並びだと思われていたものの、スモールオーバーラップ試験をしたら驚くほどの差がついたのだった。アメリカのメディアは事態の深刻さを認識し、キチンとした報道を始めた。ヨーロッパの『ユーロNキャップ』も基準改定に向けて動きそうだ。以下、日本で馴染みの薄いスモールオーバーラップについて紹介したい。

SAFETY
スモールオーバーラップという考え方はどうして生まれたか

 1980年代に入り、ドイツのADAC(日本でいうJAFに相当)や、アメリカのIIHS(道路安全保険協会)は独自に自動車の衝突試験を開始。すると自動車メーカーによって衝突安全性がまったく違うことが明確になった。やがて「当局は何をしているんだ!」ということになり、EUもアメリカも衝突基準を大幅に引き上げる。日本も欧米のマネをして60対40のオフセット衝突モードを取り入れ、エアバッグの標準装備化を始めたのはご存じの通り。

 数年すると大半の自動車メーカーが60対40のオーバーラップ衝突と、車体前面をコンクリートバリアに衝突させるというフルラップ衝突の対応を完了。

 同じ試験問題を何年も続けて出されれば、誰だっていい成績を取れる。いまや60対40のオーバーラップ衝突は、日米欧の量販車なら当たり前のようにトップランクを取れるようになった。日本の『JNキャップ』(自動車アセスメント)を見ると、☆5つの満点か☆4つばかりズラリと並ぶ。

 アメリカの保険協会は「少なくない試験費用を使うのにこのままでいいのか?」と考えた。事故で受けたダメージを改めて分析すると、死亡要因のトップが「60対40よりオフセット率の少ない衝突形態」(右下写真参照のこと)という結論に至る。考えてみれば60対40も70対30も80対20も、対向車と衝突する時は同じような確率で発生します。60対40なら平気で、80対20だと死亡するなんて理不尽。

 そのほか、コーナーでアンダーステアを出し、壁に車体の左側を擦りつけた状態で電柱と衝突したり、道路から飛び出しているコンクリートの段差に衝突したりすると、車体前面の20~30%が当たるという状況になる。決してレアケースじゃありません。考えてみれば60対40のオフセット率も、当時一番死亡事故が多かったから決められた。だとしたらオフセット率の低いモードを取り入れるのは当然の流れ。

 しかもこの事故形態、ボルボは'80年代から「危険だ」という警鐘を鳴らし、いち早く社内基準に取り入れたという。保険協会としちゃ少しでも支払い保険金を払いたくない(これは自動車ユーザーにとっても正義)ため、さっそく試験モードに取り入れることを決めた。ちなみにIIHSのオフセット率は75対25。時速40マイル(約64㎞/h)は60対40の時と変わらない。これは死亡事故で最も多いオフセット率だという。

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