TEXT/西川 淳
クルマ好きが最終的にたどり着くのがポルシェといわれるのに対し、フェラーリは究極のクルマ道楽ともいわれる。同じ跳ね馬をエンブレムに持つ両者の闘いの始まりだ!!
BATTLE1
ポルシェ911VSフェラーリ458イタリア
絶対的なパフォーマンスで、458と同等の勝負をさせようと思えば911のまだ見ぬ991ターボか、GT3を引っ張りだしたいよね。官能性でも同じで、991では迫力のエキゾーストノートを奏でるオプションも用意されるが、フェラーリV8の咆哮にはまるで及ばない。
でも、勝負の舞台を長距離移動などのグランツーリズモ性や、バリエーションの多さといった商品性におけば、がぜん911にも勝ち目が生まれる。もちろん、デイリーユースにおける機能性の勝負では911の勝ちは火を見るより明らか。要するに、価格と好みを無視すれば非日常域でのパフォーマンスをとるか、日常域での使い勝手をとるかが、911シリーズとV8ミドフェラーリの選択の分かれ目というワケで、これで911の相手がカリフォルニアならば、大いに悩んだやろけど……。
ポルシェの作りはどこまでも精密で理性的。対してフェラーリのそれは、どことなく儚さがあり、感性に訴えかける。工業製品としては、911の完成度がフェラーリを上回る。スポーツカーとしての性能と色気といった魅力で458が圧勝するも、街乗りからスポーツ走行まで1台にオールマイティな実力を求めるなら、458に劣るとはいえ当代一級のパフォーマンスを持つ911シリーズを選んで、悔いはない。
BATTLE2
ポルシェケイマンVSフェラーリ458イタリア
いずれもスポーツカーの名門が作り出したミドシップのクーペ、という意味では対決させてもおかしくない。けれども、両車の間にはベースモデル比でおよそ4倍弱という価格差が存在する。これを、どう考えるかが、この対決(フツウは対戦させないが、だから面白い)のキモ。
単純に、コストパフォーマンスを考えれば、458が負ける。だって、そうだろう。4倍高いからといって、性能やドライビングファンも4倍あるか、というと、そうではないからだ。むしろ、ミドシップカーとしての扱いの楽しさでいえば、ケイマンが勝っているかも知れない。
ケイマンのスポーツカーとしての性能は、完全に911と並んでおり、むしろ、911を超えないよう抑えるのに作り手は必死になっている感さえある。もう少しパワーのあるエンジンを積んでやれば、完全に911を上回る。991型において顕著になったグランドツーリングカー志向は、そう遠くない将来に、ポルシェのリアルスポーツはケイマンとボクスター、と言わんがためかも知れないとさえ思う。それほど、よくできた、ファンなミドシップスポーツだ。
もちろん、458だって、よくできたミドシップスポーツカーであり、絶対的なパフォーマンス勝負ではケイマンに負けるものじゃない。けれども、その差はせいぜい15%増し程度であり、色気のあるスタイリングとサウンドを除けば、ケイマンといい勝負、ということもできる。何しろ、1/4の値段やし。
フェラーリというブランドに憧れもなく、真剣に運転を楽しむツールとして3000万円はなんぼなんでも高過ぎると思う人は黙ってケイマン。そのほうが2倍は楽しめると思うな。
BATTLE3
ポルシェパナメーラVSフェラーリフォー
ええねえ、この対決。これは気に入った。興味深いやん。片や、ロードカーのスポーツカー作りで頂点に立つポルシェの4(5)ドアクーペ。片や、自動車界を超えたハイブランド性で向かうところ敵なしのフェラーリが初めて作った4駆のシューティングブレークGT。ドア数こそ違えど、ともにフル4シーターの実用性を兼ね備えたスーパーなグランドツーリングカーだ。
老舗スポーツカーブランドだからといって価格の離れたリアルスポーツ同士を勝負させるより、ずっと流行の最先端をいく〝イン〟な組み合わせだ。これなら実際にクルマを持ち出して、真剣に対決させてみたいところ。
それはともかく、全面比較するならば、パナメーラはターボSに出陣願おう。それ以外のグレードでは完全に役不足。
両車のライドフィールはまったく異なっている。それはもう完全に、ポルシェとフェラーリの考え方の違い、である。
ポルシェのそれは、ぎっしりと身の詰まった一分の隙もないしっかり感に支配されており、いかにも剛直で頼もしい。
一方のフェラーリはといえば硬いが相当に身のこなしは軽々しく、飄々としている。フォーマルなネクタイ&スーツ姿に対して、デニムに開襟シャツ、派手なジャケットを肩に引っかけたスタイル、というほどに違う。
加速フィールはいずれも強力。力強いフィールではパナメーラが優れるが、サウンドとエンジンの伸びでFFが勝る。安定感は好勝負だが、超高速域ではパナメーラか……。悩ましいが、ボクならFFを選ぶ。
BATTLE4
ポルシェボクスターVSフェラーリカリフォルニア
オープンエアを楽しめること以外、なんら共通の比較項目の見当たらない2台。こりゃもう、ほとんど異種格闘技やろ。カリフォルニアの相手としては、ホントは911カレラ4Sカブリオレあたりが適任だと思うのだけれど、まあ、エエか。
カリフォルニアがターゲットとしたのはベンツSLクラスのマーケット。それゆえ、スポーツカーとしては不利に作用するリトラクタブルハードルーフをあえて採用した。458という同じV8を積むミドシップスポーツが存在するがゆえの、そこは割り切りであり、余裕だ。
けれども、そんな余裕が、相手にボクスターというソフトトップのミドシップオープンカーを迎え撃った時、アダとなる。カリフォルニアは、決してデキの悪いスポーツカーではない。むしろ、FRとしては非常にバランスのいい運動性能を発揮する。しかし、だ。ボクスターのミドシップカーとしての素性のよさにはさすがに敵わない。
どこそこのラップタイムでどう、だとか、最高速でどう、なんて数字の話をしているのではない。肝心なのはロードカーとしての、日常+α領域におけるドライビングファンの総合力だ。
フェラーリというブランドの持つ魔力に憧れ続けている人は、とやかく言わずカリフォルニア。そうではなく、演出された音よりも、スポーツカーとしての性能バランスを重視したいという運転ツウは、ボクスターを選ぶべき。それほど、このクルマのパフォーマンスは優れてバランスがいい。ダンスを上手く踊りたいならボクスターだ。価格もほとんど3分の1だしね。