国際・外交 中国
「10年に一度の大物次官」を送り込み日中和解の糸口を探る安倍首相の"熱い夏"
アジア大洋州局長時代の齋木昭隆氏〔PHOTO〕gettyimages

 霞が関社会では、「10年に一度の大物次官」という言葉が、たびたび使われる。一番よく使われるのは、「官庁の中の官庁」と言われる財務省の次官に対してだが、その財務官僚たちが唯一、一目置いているのが、道を挟んでお隣の外務省だ。なぜなら外務省だけは2001年まで、国家公務員試験とは異なる独自の外交官試験を実施して選抜してきたからだ。

 そんな外務省に、久方ぶりに「10年に一度の大物次官」という形容詞がピタリと当てはまる次官が誕生した。7月に就任したばかりの齋木昭隆次官(60歳)である。

オールマイティ・タイプの齋木昭隆次官

 外務省の外交官たちとお付き合いしていると、3つのタイプがいることが分かる。

 第一に、担当当該国を見ているタイプだ。たとえばチャイナ・スクールなら、中国語がペラペラで、政治から文化まで、中国人の豊富な人脈を誇る人々だ。第二に、机に向かって、当該国の分析をするのが得意なタイプである。中国経済の動向などを注視している学者タイプと言える。第三に、本省と永田町ばかり見ているタイプだ。北京の日本大使館にいても、中国側と個人的に付き合おうともせず、ひたすら大使館内の大使ら上司と、東京からの出張者(本省幹部、大臣、政治家など)を見ている人たちだ。

 普通の外交官は、これら3タイプのいずれかに属するのだが、齋木次官の場合は、この3つをすべて兼ね備えたオールマイティ・タイプなのだ。

 まず専門国としては、アメリカ(ワシントンの筆頭公使)、ヨーロッパ(ジュネーブと欧州課長)、アジア(アジア大洋州局長とインド大使)と、世界を網羅している。また、外交分析には定評があり、あの世界一難しいと言われる国交もない北朝鮮との交渉でも、拉致の矛盾点を突いて、一部解決の糸口となった。さらに、本省では人事課長も経験していて、「田中真紀子外相と戦った外交官」として人望は厚いし、「拉致の安倍」と言われた安倍首相とは、北朝鮮と戦う"同志"だった。

 この「10年に一度の大物次官」は、満を持して外務省事務方トップに就任するやいなや、韓国を訪問。あれほど歴史問題で喧しかった韓国が、7月11日、12日の齋木次官の訪韓を契機に、静かになってしまった。韓国の政治家や外交官は、人間関係を重視するタイプが多い。韓国外交通商部の金奎顕第一次官は、同じワシントン勤務時代に、日本大使館の齋木次官を頼っていたこともあり、互いの信頼関係は十分にできているのである。

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