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ニッポン農業生き残りの鍵となる安全の証明 そのノウハウを売る社員数6名のベンチャーがある

 日本のTPP交渉への正式参加が7月23日に決まった。TPP参加により、輸出と輸入の両面で農業分野は大きな影響を受ける可能性があることは多くのメディアが報じている。
海外の大規模農地で安価に栽培された農産物が入ってくるため日本の農業が壊滅的な打撃を受けるとか、逆に日本の農産物の輸出のチャンスが開けるとかいった見方がある。

 安倍政権も農産物の輸出倍増計画を打ち出しているが、今回は日本の農産物は本当に輸出競争力があるのかという点について考えてみたい。

「日本の農産物や食品の栽培・生産現場では、安全管理の世界標準に合致した手法を取っていないケースが多いため、グローバル市場では受け入れられにくいのが現状」

 こう話すのは、認証取得や生産管理システム導入などでコンサルティングを行っているベンチャー企業「ファーム・アラインス・マネジメント」(本社・東京都千代田区、資本金2,799万円、社員6人)の松本武社長だ。

農産物や食品の安全基準は国や地域で異なっている

 松本氏の話をさらに詳しく説明するとこうなる---。
 消費財など流通で世界最大の業界団体である「TCGF(ザ・コンシューマー・グッド・フォーラム)傘下の食品安全部会「GFSI」(グローバル・セーフティ・イニシアティブ)では、グローバルGAPなどグローバルスタンダードの安全基準を取得した農産物や食品しか取り扱わない傾向が強まっている。TCGFの前身は国際チェーンストア協会であり、グローバルGAPとはドイツに本部を置く非営利団体が世界中の農産物の安全を審査する適正農業規範基準のことである。

 農産物でグローバルスタンダードの安全基準取得が強化される背景には、グローバル経済の進展によって、大手流通の調達網や販売先も世界規模で拡大していることがある。農産物や食品は安全第一が求められるが、国や地域によって安全基準が違えば、流通側が個別にその確認をしなければならず、安全管理にかけるコストが上昇するからだ。
 このため、業界が求める安全や品質の水準を決め、その水準をクリアするための国際的な認証を取得していることが大きな取引条件となっているのだ。

 しかし、日本では、グローバルGAPなどの国際的に通用する認証を取得している農家やそのような国際的状況を理解している食品メーカーや小売が非常に少ない。
 その背景には、県単位でのGAPや生協GAPなど地方自治体や業界が個別の認証を差別化ツールとして作成してきたことがある。国際的なデファクトスタンダードが既にあるにもかかわらず、敢えて日本版をつくるなど携帯電話などに見られる「ガラパゴス化」の悪夢を再び農業に持ち込みかねない状況なのだ。

 たとえば、日本の美味しい牛肉を輸出しようと計画しても、食肉処理施設が国際的な安全認証を取得していなければ、流通側で受け入れ先が見つかりにくいという課題に直面する。実際、日本の食肉処理施設で国際的な認証を取得しているところは、鹿児島県や群馬県などの一部に限られている。
 このため、ある北海道の畜産農家は「輸出には興味はあるが、北海道から群馬まで牛を運ぶコストを考えたら採算が採れるかどうかは分からない」と語る。

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