経済の死角
当初見込みの3倍のペースで増産が進む米国のシェールガス

文/ 野神隆之(JOGMEC 石油調査部上席エコノミスト)
シェールガスとは、シェール=頁岩(日本ではおもに硯に使用される黒い石)に存在する天然ガスであるが、成分的には通常のガス田から生産される天然ガスと同一のものである。
ただ、硯を御覧頂ければお判りの通り、この石にはほとんど隙間が存在しないように見える。しかしそれは肉眼ではそう見えるだけで、実際にはごく微細な隙間が無数に存在し、その隙間に天然ガスが含まれる。とはいえ、やはり天然ガスにとってもその隙間は小さく、なかなか流動できないという性質を持っている。
通常のガス田は砂岩等の地層にできるのだが、砂岩層には、場合によっては肉眼でも辛うじて見えるくらいの隙間が多数存在しており、その中を天然ガスが流動する。このため、地上から垂直に井戸を掘削すると圧力差が生じて、地中に賦存する天然ガスが隙間を流動して坑井に集合、地上に向けて噴き出すことになる。
しかしながら、シェール層ではそのような隙間が非常に狭いため、地上から垂直に井戸を掘削しても、坑井の周辺の天然ガス資源がごく少量生産されるのみで、大半の資源は地中に留まったまま、いわゆる"とりっぱぐれ"ということになる。
そのため、シェールガスは生産性が悪く、存在自体は古くから知られていた(1821年という説もあるくらいだが、近代石油・天然ガス産業の成立は1859年であるので、それ以前ということになる)ものの、長い間商業的に大量生産には至らなかった。