二宮清純レポート 千葉ロッテ監督 伊東勤 小心者だから、勝負に勝てるのです

 開幕前、専門家の誰もがBクラス予想をしたロッテが、優勝も狙える位置にいる。戦力不足は間違いない。だけど勝てる。その秘密は、人一倍臆病な男・伊東勤の誰よりも勇気ある大胆采配にある。

棋士のように最善手を指す

 1点差の勝利は監督の手腕、3点差の勝利は選手の働き、5点差以上の勝利はフロントの力—。

 かつてメジャーリーグを取材している時、元球団幹部から、そんな話を聞いた。なるほど、そういう見方もあるのか、とうなずいたものだ。

 16勝6敗(前半戦終了時・以下同)。今季、千葉ロッテは1点差ゲームで10の貯金をつくっている。勝率にすると7割2分7厘。オリックスとの本拠地での開幕ゲーム、2戦目はともに延長12回でのサヨナラ勝ちだった。

 最初にその点を質すと、今季から指揮を執る伊東勤は、つとめてクールな口調で、こう答えた。

「ウチのチーム事情を考えた時、一方的に点を取って圧倒するという勝ち方は、ほとんど望めない。接戦をモノにしていくことでしか上位には行けないと最初から思っていました。

 その意味で、最初の2つのゲームを延長でとったのは大きかった。あれで"オレたちはいけるぞ"という自信をつかむことができましたから……」

 昨季、ロッテは前半戦を首位で折り返しながら、最終的には62勝67敗15分で5位に終わった。成績不振の責任をとるかたちで西村徳文が監督の職を辞した。

 後任として白羽の矢が立ったのが、埼玉西武の前監督で、韓国プロ野球の斗山ベアーズでヘッドコーチをしていた伊東だった。

 勝てるチームをつくるにあたり、新指揮官が真っ先に手をつけたのがメジャーリーグでもワールドチャンピオンを経験するなど実績のあるセカンド・井口資仁のファーストコンバートだった。

 セカンドとして福岡ダイエー(現ソフトバンク)時代にベストナインとゴールデングラブ賞に各3度輝いている井口にすれば、ファーストへの転向は"セカンド失格"を意味する。

 動きは鈍っても、プライドは残る。それがプロ野球選手という生き物だ。

 伊東はベテランを、どう説得したのか。