佐藤優の読書ノート---『科学の果ての宗教』ほか

読書ノート No.50

内村剛介『科学の果ての宗教』講談社学術文庫 1976年

ロシア文学者で思想家の内村剛介(1920~2009年、本名、内藤操)氏は、私に強い影響を与えた知識人だ。内村氏以外の20世紀に活躍した日本の知識人の中で、専門分野であるプロテスタント神学者を除くと、私は宇野弘蔵氏、武市健人氏、その少し前だと田邊元氏、高山岩男氏、高畠素之氏らの影響を受けた。その中でもっとも強い影響を受けたのは宇野弘蔵氏である。

私の内村氏のテキストとの最初の出会いは、神学的関心からだった。私が最初に読んだ内村氏の著作は、『科学の果ての宗教』だった。当時、私は同志社大学神学部の2回生で、ライフワークとして神学を勉強しようと決意した直後のことだった。プロテスタント神学研究には、英語、ドイツ語などの現代の外国語とともにヘブライ語、コイネー(共通)ギリシア語、古典ギリシア語、ラテン語などの古典語の知識が必要になる。それに、神学は、その時代に流行してる哲学の枠組みを用いる傾向が強いので、哲学史の勉強も必要になる。従って、膨大な勉強時間を確保しなくてはならない。そのため、私は、下宿にあった小型テレビと(五味川純平と高橋和巳を除き)小説類をほとんど友人にわけてしまった。

その直後、私の記憶では、1980年の秋、京都の三条河原町下ルにあった駸々堂書店の文庫コーナーで『科学の果ての宗教』を買った。幼いイエス・キリストを抱いた聖母マリアのイコン(聖像)の表紙に惹かれた。この本は今も私の手許にある。奥付は1976年12月10日の初版なので、ベストセラーではなかったのだと思う。・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・猪木正道『共産主義の系譜――マルクスから現代まで』角川文庫 1984年
・Сергей Николаевич Булгаков ,От марксизма к идеализму. Сборник статей 1896-1903, СПб., 1903(セルゲイ・ニコラエビッチ・ブルガーコフ『マルクス主義から観念論へ 1896~1903年の論文集』サンクトペテルブルク、1903年)
・佐藤優『甦るロシア帝国』文春文庫 2012年
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