【シマコービジネススクール】 ~日本経済が抱える問題を「島耕作」シリーズで考える~
第1回 日本の家電メーカーをめぐる現状(上)

早稲田大学ビジネススクール 准教授 長内厚

 シマコービジネススクールとは?
日本を代表するビジネスマンガといえる「島耕作」シリーズ。大手家電メーカーで働く主人公が、現代企業版「のらくろ」のように出世をする過程で、様々なビジネスや事件を体験していきます。ストーリーには、著者の弘兼憲史先生の綿密な取材を基にした実話エピソードもちりばめられていて、企業、特に製造業の ケーススタディーの素材としても活用できるほど。
そこで、このコーナーでは、早稲田大学ビジネススクール(大学院商学研究科)で技術経営・経営戦略論を教える筆者が、島耕作シリーズのケーススタディーを通じて、ビジネススクールの講義のエッセンスをお話しします。

Chapter1. 『社長 島耕作』と家電業界の現実

社長会で社長退任を発表。今後は会長としてテコットの社業から離れ世界を舞台に仕事をすることになる

テコットとパナソニック

長内厚(おさない・あつし)早稲田大学ビジネススクール准教授。経済学博士。元ソニー社員の経験を活かし、技術経営、イノベーションマネジメント、経営戦略論、新商品開発マネジメントなどを中心に研究を続ける。主な著書に『アフターマーケット戦略』(榊原清則共著、白桃書房)などがある。研究内容の詳細などはホームページから→ http://www.f.waseda.jp/osanaia/

モーニング』本誌では、社長編が最終回を迎え、8月29日発売号からいよいよ島耕作が会長になります。島耕作の会長就任は昇任なのか勇退なのか?

初芝電産から初芝五洋ホールディングスと社名変更をして、リチウムイオン電池の高い技術を持つ競合メーカーを買収するなどのストーリーは、現実社会のパナソニックと三洋電機の話を思い浮かべる人も多いことでしょう。弘兼先生ご自身が松下電器出身で、昔から初芝電産のモデルは松下と言われていましたから、自然な流れともいえます。

2000年代半ばの激動のエレクトロニクス産業を率いてきたリーダーという意味でも、島耕作と、パナソニックの前経営陣もかなり重なって見えるでしょう。ただ、最近の動きを見ていると、パナソニックとテコットでは、大きな経営方針に対極的に異なる点があり、そこが島耕作の評価の肝になるのではないかと考えられます。

みなさんご存じのとおり、パナソニックは日本を代表する総合家電メーカーであり、高い技術力と優れたマーケティング力によって、戦後以降、日本国内の家電市場の王者の地位を守り続けています。しかし、問題なのは、ビジネスのグローバル化です。

ソニーやシャープの海外売上比率が約7~8割なのに対して、パナソニックは未だに約5割が国内の売り上げです。世界市場を席巻する韓国のサムスン電子やLG電子も日本国内の家電市場ではあまり存在感がないことを考えれば、安定した内需は悪いことではないとみることもできるかもしれません。これがアナログ家電の時代であれば、確かにそれでも良かったのかもしれません。

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