ドイツ
ドイツの主要メディアは安倍自民党の圧勝劇をどう伝えたか?
〔PHOTO〕gettyimages

 7月21日、注目の参院選が終わった。これを翌日、ドイツのメディアがどう報道するかと、私は興味津々だった。

 ドイツには2つの公共放送局がある。ARD(ドイツ公共放送連盟)とZDF(第2ドイツテレビ)で、どちらも全国放送を流している。

 ARDは、1950年の開局以来、中立で真面目な報道を続けてきたドイツの看板放送局だ。とりわけ、夜8時のニュースは定評がある。そして、このニュースは、世界のどこにいてもインターネットでそのまま見られるので、日本に滞在中の私はパソコンの前で心待ちにしていた。

 ところが、次か、次かと待っていたのに、違うニュースばかりで、最後にあっさりと天気予報になってしまったのにはビックリ。つまり、日本の参院選は、"どう報道されるか"どころか、まったく取り上げられなかったのだ。さすがにこれにはがっくりきた。

 そこで、ARDのホームページで、「日本、選挙」と検索してみると、一応、関連ニュースは数個見つかった。ただ、検索して出てくるニュースと、テレビで流れる主要ニュースとでは、露出度が格段に違う。

 今回の参院選はこれからの日本の行方を決定する重要な選挙であったはずだし、日本という国は、政治的・軍事的には力を持たないが、世界経済に与える影響はまだまだ大きい。G8の参加国でもある。その日本の変化の兆しを、たとえ30秒でも全国放送のテレビニュースで取り上げられなかったものかと、とても残念に思う。

日本の軍国主義化を危惧する国民が投票を放棄?

 一方、ZDF。ARDとは若干カラーが違うが、なかなかよい報道をする元気な放送局だ。こちらのテレビニュースは、日本の参院選を報じた。それも、30秒ではなく、まるまる2分だったから、結構念入りに報道されたことになる。

 まず強調されたのは、この選挙結果は、政権の座に就いて7ヵ月経った安倍内閣が、国民から広く支持された証拠であるということ。また、この勝利により、安倍首相はついに自由裁量権を手にし、野党の束縛を受けず、独自の政策をさらに強力に推し進めることができるようになる、というものである。それは、間違っていない。

 ただ、続きを聞くと、「?」と思う。というのも、安倍政権が推し進めようとしているのは景気向上のための政策で、それは「円安政策」だという。つまり、日銀の操作による「金の氾濫」と「安い金利」で経済を活性化し、輸出を伸ばすことだそうだ。しかし、これではまるで、安倍政権が強権的、かつ、作為的に、為替操作を実行しているように聞こえる。そして、それを諸手を上げて支持した日本国民までが身勝手に思えてくる。

 私は、ここ数年、円は異常に高かったので、ようやく妥当な線に戻ったと感じている。しかし、もちろんドイツにとって、そのようには報道されない。車や工作機械など、多くの輸出品目が日本と重なるドイツでは、円は高ければ高いほど都合がよいのである。日本が為替操作らしきものをしており、国民がそれを支持しているとなると、反感を買うのは当然だ。

 また、このニュースで変なのは、今回の選挙の投票率がたったの52%であったということから、日本国民の意見が割れているという話に持っていき、それをさらに、多くの国民が、安倍首相の右翼的かつ国家主義的な考え方や、日本の軍国主義化を危惧しているという結論につなげてしまったことだ。

 百歩譲って、多くの国民が日本の右傾化を憂慮していることが事実だとしよう。しかし、それでも投票率との関わりはまったく説明できない。反安倍派は選挙に行かなかった、あるいは、行けなかったということだろうか。

 日本には、有権者を選挙に行かせようとする政党はたくさんあるが、選挙に行くことを妨害するような勢力は存在しない。特定の人に投票しなければいけないような脅迫も行われていない。選挙時に国連の査察団が入るのは、どこか他の国の話だ。

 日本の選挙の投票率が低いのは、残念ながら、今始まったことではない。日本人の政治的関心の低さの表れである。特に今回は、自分が投票しなくても、どうせ自民党が勝つだろうと思っていた人がかなり多かったと思う。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら