現代ビジネス夜大学Co-Work 時代の仕事術【第3回】「佐々木俊尚に聞く!レイヤー化する世界と新しい仕事のスタイル」(前編)
 
7月16日(火)に、現代ビジネス夜大学の第3回目が開催されました。ナビゲーターは、早稲田大学オープンカレッジなどで講師を務める資産設計アドバイザー の内藤忍さん(写真左)と、株式会社ガイアックスで、業務に特化したグループコミュニケーショツール「Co-Work」 の責任者である佐別当隆志さん(写真右)。スペシャルゲストとして、近著「レイヤー化する世界」が話題のITジャーナリス ト、佐々木俊尚さん(写真中央)を迎えて、仕事術をテーマとしたディスカッションを、約50名の参加者と実施しました。

内藤: 今日は世の中の変化の中で、仕事にフォーカスして、今後、どのようなことを考えていけばよいか、3人でお話していきたいと思います。

「場」と共犯する生き方とは

内藤: 佐々木さんの近著「レイヤー化された世界」には、インターネットというテクノロジーがこれまでのウチとソトの概念をぶちこわし、ただひとつの「場」に変えていく構図を描いています。音楽業界がアイチューンズによってレコード会社やあるいは国境、プロと素人という垣根がなくなり、音楽流通という「場」に誰でも配信できるようになったことを、ひとつの典型例としてあげておられます。

では「場」の時代をどうやって生きのびていくのか?それは、「レイヤー」という層を意識しながら、「場」と「共犯」しながら生きていくことだという。ここで共存ではなく、共犯という言葉を使っていることが、非常におもしろいですね。

 「場」と共犯するにはどうしたらいいのでしょうか。「場」を利用して活き活きとした人たちと、「場」に搾取されるかわいそうな人たちとで分けられるなかで、前者の「場」を利用して活き活きと生活している人ということになるでしょうか?

佐々木: そうですね。テクノロジーと言うと、どうしても「支配される」という話になってしまいます。最近ではJRが、Suicaの利用者データ(誰がいつ、どの駅を利用しているか)を、日立にビッグデータとして販売する、という話がありましたが、それに対して強い批判が起きました。また、フェイスブックやグーグルのデータを、アメリカのNSA(アメリカ国家安全保障局)が勝手に収集し、テロ対策に使用したことに対して、「私のデータを盗むな、勝手に使用するな」という話が出ていました。

 僕は、これは議論する意味がないと思っています。自分がどこをどう移動していたかを知られたからといって、それがデメリットになるのでしょうか?

内藤: 気持ち悪い、とか・・・

イベントの第一部で行われた、佐々木俊尚さんの講演「ソーシャル、クラウド化する世界と新しい仕事のスタイル」は、動画でお伝えいたします。
佐々木俊尚(ささき・としなお)毎日新聞記者、月刊アスキー編集部を経てフリー・ジャーナリストに。IT分野を中心に精力的に取材、「ウェブ2.0」現象についての執筆を続ける。『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる 』(ちくま新書)『仕事するのにオフィスはいらない』(光文社新書)、『マスコミは、もはや政治を語れない』(講談社)、『電子書籍の衝撃』(ディスカバー21)、『レイヤー化する世界』(NHK出版)など著書多数。ホームページはhttp://www.pressa.jp/

佐々木: それだけでしょう。それをデメリットとして感じるよりも、その「場」を利用した方が、メリットして大きいのではと考えます。テクノロジーに対して、変に拒否反応を起こさず、どんどん使いこなし、自分の優位性を保った方が、結果的に自分にとってのメリットが大きいと思います。

内藤: 実際に「場」と共犯しながらとなると、色々な戦略があると思います。先ほど(第1部)の中で話をされていた、3万円の仕事を10個、という話ですが、他の競争相手との差別化、という点が一番問題になるのではないでしょうか?

佐々木: 差別化だけで生き延びていくというのは、よほど優秀でないと難しいです。でも実は、僕の周りの人たちの動きをみていると、差別化よりも、仕事を紹介しあうやり方が多いです。

内藤: ネットワーク、ということですね。

佐々木: そうです。中世にさかのぼると、ギルド(組合)というのがあったでしょう。例えば、大工さんなら大工さんの組合があります。仕事を頼む時、大工さん個人でなく、組合に頼み、組合が個人に仕事を紹介する仕組みになります。それに似た状態で、仕事を紹介し合う、という状態が最近起きています。

 僕は仕事柄、広報に所属している方とお付き合いすることが多いですが、特にベンチャー企業の広報の方は、転職がすごく多く、3年に1回位の割合で転職しています。なぜそんなに転職が出来るかと言うと、広報は仕事の優位性として、専門性が高く、自社に詳しいことよりも、色々なメディア、ジャーナリスト、ブロガーといった外部の発信者とつながりがあるかどうか、があります。たくさんの発信者と繋がっていると、どんな会社にいても広報の仕事は成り立つのです。

 しかも、広報の方々はお互いに仲が良く、頻繁に集まり、勉強会や飲み会をしたりしているので、どこかの企業の人員募集情報が瞬時に回り、それを聞いて、みんな転職していくのです。

内藤: なるほど。

佐々木: これも一種の「広報ギルド」といえます。こういうネットワークで繋がることで、仕事を紹介しあえることが現実に起きており、こういうことを実践することが大事だと思います。

佐別当 必ずしも、スキルで点数をつけられて、点数の上位の人から順番に仕事が紹介されるわけではありませんね。同じスキルであっても、仕事がある人とない人との差は、ネットワーク力のありなし、といえます。

佐々木: そういうことだと思います。仮にものすごく優秀であれば、孤高の人でも大丈夫かと思いますが、そうではない人にとっては、このようなやり方が普通になってくると思います。

内藤忍(ないとう・しのぶ)株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長。株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長、クレディ・スイス証券プライベートバンキング本部ディレクターなどを経て、2013年1月より現職。早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学などで講師を務める。主な著書にシリーズ10万部を超えるベストセラーとなった「内藤忍の資産設計塾」シリーズ。「60歳までに1億円つくる術」「「好き」を極める仕事術」「丸の内朝大学マネーの教科書」など多数。公益社団法人日本証券業協会証券検定会員。

内藤: そうすると、レイヤー化することが必要、ということですね。

佐々木: ネットワーク理論、という言葉があります。人間関係には、強い繋がりと弱い繋がりがあります。強い繋がりとは、会社や家族のような、頻繁に会う人との関係。弱い繋がりとはフェイスブック上でのお友達だったり、たまにあるパーティで久しぶりに会う人だったりします。新しい情報や、新しい仕事の紹介というのは、実は、弱い繋がりからたくさん入ってくるのです。

 なぜかと言うと、強い繋がりは、閉じたコミュニティと化しているからです。例えば家族で話をしていても、新しい情報は入ってきません。それに対して、日頃一緒にいない、弱い繋がりの人と会うと、「そんな仕事をしているのですか、じゃあ一緒に○○をやりませんか」という話になるじゃないですか。繋がりが弱いほうが、新しい仕事、新しい案件の情報が入りやすいと、実証的にも言われています。だからこそ、ゆるい色々な繋がりを持っていることが大事なのです。

内藤: 私も今年から、独立して仕事を始めたのですが、色々な人から食事に誘われ、中にはこれまでまったく付き合いのない人からも誘われたりします。最近思うのは、そうときこそ、凄く重要だなということです。何のメリットもないなと思っていた人と、たまたま食事をしていた際に接点が見つかり、じゃあ、それ一緒にやりましょう、という話になったり、人を紹介することになったりして、話が成り立ったりするんですね。そう考えると、変に目的を持って会うと、最初から発展性がなくなってしまいます。

佐々木: 同じ業界で、同じ目的の人と会って、ギラギラと仕事の話をしても。

内藤: そうですね。お互いに仕事のけん制をしあったりして(苦笑)。

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