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経営者とは何か「社長解任」川崎重工クーデターのみっともなさ

 高度経済成長期には「お家芸」とまで言われた造船業が苦境に喘いでいる。業界2位と5位の大型合併は、暗礁に乗り上げた。目も当てられない権力闘争の裏側には、企業経営の問題点が詰まっている。

なぜ情報が漏れるのか

 創業100年を超える名門企業で起きた、前代未聞の社長解任劇—。川崎重工業の元常務、浅野雄一氏も驚きを隠せない。

「社長解任を知ったのは、その直前のことで、えらく驚きました。川崎重工には、巷間言われている派閥のようなものもないし、実際は温厚な企業体質なんですよ。長谷川社長も極めて真面目で、経営者としても立派な方です。

 それがなぜ、あのような解任ということになってしまったのか、理解に苦しみますし、クーデターだとか、分裂などという報道を悲しく思います」

 総合重機大手の川崎重工業は、6月13日の臨時取締役会で、長谷川聰社長(65歳)ら取締役3人を解任した。長谷川前社長らが推進した三井造船との経営統合に反対する取締役が、緊急動議を提出したもので、13人の役員のうち、解任された3人を除く10人が賛成し、わずか35分で「クーデター」が成功。新社長には村山滋常務取締役(63歳)が就任した。

 公認会計士の山田真哉氏も、突然の解任劇に驚いた一人だ。

「統合交渉は、取締役会や会計士にも知られないように、トップ同士が極秘裏に進めるのが基本。最後はトップがリーダーシップを発揮して、反対派がいたとしても、それを押し切るのが普通です。ところが今回は、交渉中に取締役会に知られ、4月には日経新聞でも報道された。しかも、その報道を川重側が明確に否定した。異例中の異例のことです。日本の企業は、こうした場合、肯定とも否定ともつかない曖昧な表現でかわすのが普通です。否定しないと株価に影響すると判断したのかもしれませんが、今の時代、みんなウソに敏感です。川重の対応はあまりにも非常識でした」

 それでは、今回のクーデター劇をどう評価すればいいのか。大阪経済大学客員教授・岡田晃氏は、二つの要素があると言う。

「ひとつは、統合・合併という経営者の判断が適正だったかどうか。川崎重工と三井造船の統合については、川崎重工側にとってメリットが少ないと言われていました。

 もうひとつ考えるべきことは、もし、経営トップの判断が適切でないとしたら、川崎重工は生き残りのために何をすべきなのかという点です。統合という選択肢を選ばないのであれば、どんな方法があるのか。これは、クーデターを起こした側の問題です。しかし、今回、村山新経営陣には明確な対案がなかったように見える。長期的に見ると、今後の川重の方向性が非常に不安に思えます」

 権力を握ったものの、その権力を行使して成し遂げる目的が見つからない—。その様は"みっともない"と言わざるを得ない。

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