「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第12回】 ~米国に「ミニ景気後退」リスクの可能性?~

〔PHOTO〕gettyimages

前回、米国を起点とした世界的な長期金利(債券利回り)の上昇は、マクロ経済的な根拠に乏しく、低下する可能性が高いという点に言及した。米国の景気回復(もしくは経済の正常化)が長期金利上昇の背景にあるとすれば、市場の予想インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率)は長期金利と同時に上昇するはずである(現に、過去の景気回復局面では、長期金利上昇とブレーク・イーブン・インフレ率の上昇が同時に起こっていた)。

 だが、今回の長期金利上昇局面では、ブレーク・イーブン・インフレ率は逆に大幅に低下した。すなわち、今回の長期金利上昇は、景気の回復による将来のインフレ率の上昇を予想しての債券の売りではなく、マクロ経済的な要因とは別の債券市場特有の需給要因による売りだった可能性が高い(一説には、日本のメガバンクが保有していた米国債を大量に売却したらしいが、真相は明らかではない)。

FRBは金融緩和を強化せざるを得ないのでは

 そこで、今後の米国経済の動向だが、筆者は、米国の長期金利はさらに低下する可能性が高いと考えている。現在、米国10年国債利回りは2.5%近辺で推移しているが、これが今年の終盤(10-12月期)、もしくは来年初め頃には、再び2%近くまで低下してもおかしくないのではないかと考えている。

 ちなみに、ブルームバーク社によれば、米国のエコノミストの約半数が、9月にもFRBが出口政策(債券購入プログラムの縮小)を開始すると予想しているらしいので、筆者の考えは、少数派(というよりも奇を衒った「コントラリアン(逆張り屋)」)に属するものだろう。

 筆者が短期的には米国長期金利が低下すると考えるその根拠は、今後、米国経済で景気の減速感が出てくるのではないかと考えているためである。その理由は、財政当局による歳出削減の影響で企業活動の減速がさらに加速し、これが雇用や消費に波及するかもしれないと考えているためである。

 バーナンキ議長の発言にもあったように、FRBは出口政策には慎重であり、年内の債券購入削減はないと個人的には考えているが、現行の金融政策を維持したとしても、企業行動の減速を止めることは難しくなるのではないかと考える。結局、(これをQE4と呼ぶか否かはともかく)FRBは金融緩和を逆に強化せざるを得ないのではないだろうか。

 ただし、これは、米国経済のリセッション入り等の悲観シナリオを意味するものではない。最終的には、金融緩和の再開が実現すれば、2014年の米国経済は再び回復(正常化)の過程に戻ると考える。

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