わかりやすい伝え方の法則
【第4回】 訴訟にまで発展した「カタカナ語問題」

〔PHOTO〕iStockphoto

【第3回】はこちらをご覧ください。

 先日、ある男性が、NHKを相手に慰謝料を求める訴えを起こしました。

 この男性は、番組内で外国語が乱用されたため、精神的苦痛を受けたとしてNHKに対し141万円の慰謝料を求めました。NHKは公共放送なので、誰に対してもわかりやすく伝えなければいけない、NHKはその義務を怠っている、ということです。

 また、訴状には、

・「リスク」や「ケア」など、外国語を使わなくても表現できる言葉を多用している
・番組名にも「BSコンシェルジュ」「ほっとイブニング」など外国語を乱用している

 とあるようです。

 たしかに、日本語でも表現できることを、理解しづらい外国語で伝えられたらイライラするでしょう。

 しかし、にもかかわらず、外国語(カタカナ語)は、世の中にあふれています。なぜ日本で表現できる内容をわざわざわかりづらいカタカナ語で表現するのでしょうか? それによってストレスを抱える人が少なからずいるのに、なぜカタカナ語はこんなにも乱用されるのでしょうか?

 この「カタカナ語問題」、みなさんはどう考えますか?

暮らしの中に外国語があふれている

 これに関連して、日経新聞が調査を発表しています。

〈 暮らしのなかに外国語があふれている。「テーマ」「スピード」といった耳になじんだ言葉だけではない。最近は「サステイナビリティー(持続可能性)」「ダイバーシティー(多様性)」などという、まだちょっとこなれない新語も増えた。

 そうした傾向が気になるという声をよく聞く。(中略)5年前に比べ、日常生活で外国語を耳にする機会は増えたかどうか。調査結果をみると「増えた」「どちらかといえば増えた」が計76%。使われ方についてどう感じるかを聞いたところ「使われすぎている」「どちらかといえば使われすぎている」が52%と、半数を超えた。やはり違和感は小さくないようだ。 〉
(2013年7月22日 日本経済新聞 サーベイ 『外国語「使われすぎ」52% 巧みな言い換え難しく』)

 このように多くの方が、「暮らしの中に外国語が増えている」と感じているようです。

 カタカナ語を聞くと、なんとなくわかったつもりになりますが、本当のところ、意味を理解できていない場合が多いものです。そもそも、カタカナ語は日本語にできないからカタカナ語なのです。その時点で、日本人には理解しづらいような意味をもつ言葉なんです。

 ところが、カタカナ語を使って話すと、なんとなく「すごいことを言っている」ように聞えるためか、それを頻発するビジネスマンも多くいます。自分では「カッコイイ」と思っているのかもしれません。あるいは、単純に、カタカナを日本語に変換するのが面倒なのかもしれませんね。

 日本語にするためには、自分の頭でしっかりとカタカナ語の意味を理解しなければなりません。しかも、話す内容にあわせて適切な日本語を見つけてこなければなりません。それが面倒だから、ついついカタカナ語を使ってしまうのかもしれません。

 でも周囲から見ると、タレントのルー大柴さんみたいで、なんだか滑稽です(ルー大柴さんは、そういう芸風なので何も問題ありません)。第一、内容がわかりづらいです。

 たとえば、社長がこんな経営方針を発表したら、みなさんはどう思いますか?

わが社の経営方針を伝える。わが社はこれから、ダイバーシティを重視した経営を行なう。社員一人ひとりの適性に応じたワークシェアリングを徹底するとともに、一人ひとりのモチべーション管理にもコミットしていく。一方で、マーケットの動きに素早く対応できるよう、それぞれのディヴィジョンのモニタリングを強化していく。

 これでは何が何だかわかりませんよね。だから、カタカナ語はできるだけ日本語に置き換えてから伝えるように努めなければなりません。

 では、この例文をもとに、実際にカタカナ語を日本語に変換していきましょう。それぞれ、日本語ではこのように表現します。

「ダイバーシティ」= 多様性・相違点
「ワークシェアリング」= 業務分担・勤労者同士で雇用を分け合うこと
「モチベーション」= やる気
「コミット」= 目標に対して責任をもつ
「マーケット」= 市場
「ディヴィジョン」= 部署
「モニタリング」= 点検・管理

わが社の経営方針を伝える。わが社はこれから、社員が一人ひとり違った個性をもつことを重視した経営を行なう。社員一人ひとりの適性に応じて業務を振り分けることを徹底するとともに、一人ひとりの社員がやる気をもってもらえるような仕組みづくりを責任をもって行なう。一方で、市場の動きに素早く対応できるよう、それぞれの部署が行っていることを経営陣がしっかりと管理していく。

 カタカナを日本語に置き換えただけで、かなりわかりやすくなったのではないでしょうか?

 このように、「カタカナ語」はできるだけ「日本語」に置き換えて伝えるようにしてください。もちろん、「ラジオ」や「パソコン」などのように、すでに日本語として定着しているものまで無理に変換する必要はありません。小学生に通じないカタカナ語は日本語に置き換える、とでも考えていただければ大丈夫です。

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