天草で「シマアジの生ハム」を作る田脇水産は 長崎大との産学協働で6次産業化を目指す
田脇水産の田脇誠一社長と養殖中のシマアジ [Photo] 筆者

 参議院議員選挙も終わり、いよいよ安倍晋三首相が掲げる「成長戦略」が実行本番を迎える。
 その1つの柱として打ち出されているのが農林水産業の「6次産業化」の推進だ。
 農水産物などの1次産品をそのまま出荷するのではなく、加工(2次産業)や、販売・サービス(3次産業)と組み合わせることによって付加価値を高めていこうとするもの。1次+2次+3次で6次産業化というわけだ。そんな取り組みを追う現場リポート。
 今回は大学と水産業者が一体となって取り組む「産学協働版6次産業」を紹介する。

 『シマアジの生ハム』をご存じだろうか。

 高級魚のシマアジの身をごく薄く切り、柚子の香りを付けて生ハム状に仕上げたものだ。
 熊本・天草で養殖業を営む田脇水産が長崎大学水産学部の協力を得て開発した。田脇水産のホームページのほか、東武百貨店のオンラインショップなどで販売、ちょっと変わった贈答品として好評を博している。自然解凍してそのまま酒の肴とすることもできるが、サラダ仕立てにしたお洒落なオードブルなど活用範囲は広い。

味噌漬けや一夜干しなどを試した結果「生ハム」にたどり着く

 シマアジは非常に美味で、アジ類の中では最高級。値段も高い。
 田脇誠一社長は「美味さは刺身が一番だけど、生の流通ではせいぜい2~3日しかもたない。冷凍しても運べるように、おいしく加工することを考えた」と言う。
 味噌漬けや一夜干しなどいろいろ試した結果、生ハム状にするのが最もシマアジの持ち味を生かせるという結論に達したのだそうだ。

 田脇水産は天草でマダイとトラフグ、シマアジの養殖を行ってきた。
 田脇社長の父が養殖に成功。長崎大学水産学部で学んだ田脇社長が本格的に養殖業を始めて27年になる。養殖いかだは100台に達し、出荷量はマダイが年間10万~15万尾(稚魚販売を含む)、トラフグが3万尾、シマアジ1万尾、と規模は大きい。養魚用の魚を産卵させ、孵化させる種苗生産の施設も持ち、活魚の出荷まで一貫して事業展開している。
 植物性プランクトンのクロレラを培養、それを餌として、動物性プランクトンのシオミズツボワムシを育て、幼魚のエサとしている。餌づくりの段階からこだわって魚を育てているのは、それによって魚の味が大きく変わるからだ。

 だが、生魚の出荷ではどうしても相場の変動に左右される。養殖は全国で行われるようになり、価格も大きく下がった。かつて熊本に200軒あった養殖業者は今は3分の1になったという。
 田脇水産も社員8人、パート4人を抱えて、相場変動にあまり左右されない経営を目指さなければならない。それには、付加価値の高い加工品の拡大がカギだったのである。

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