2話の平均視聴率は20.6%!! 型破りなビジネスドラマ『半沢直樹』がドラマ界の潮流を変える!?
TBS日曜劇場『半沢直樹』公式HPより

前々回の本コラムでも取り上げたが、TBSの日曜劇場『半沢直樹』が抜群に面白い。巷でも話題沸騰のようだし、活字メディアも次々と取り上げている。もちろん視聴率も良く、2時間特別編だった初回が19.4%で、第2話も21.8%。7月期のドラマで、最高の平均視聴率を得そうな気配だ。ひょっとすると、ドラマ界の潮流さえ変えてしまうかも知れない。

 決してオーバーな話ではない。ドラマ界にも流行があるのはご存知の通り。トレンディドラマがブームになれば、各局が一斉に洒落た恋愛ドラマを作る。刑事ドラマ、学園ドラマ、医療ドラマでも同じこと。

 ヒット作が模倣されるというより、視聴者のニーズがそこにあると分かれば、当然のように似た作品がつくられる。電機メーカーだって、「ルンバ」が当たれば、こぞってお掃除ロボットを売り出す。『半沢直樹』のヒットは、ビジネスドラマの流行を予感させる。

まるで隣の会社のような舞台設定

 ビジネスドラマは過去にもあった。けれど、視聴率は意外なくらい振るわなかった。投資ファンドの実態を描いたNHK『ハゲタカ』(2007年)は国内外で高い評価を得たが、全6話の平均は8%以下。商社の内幕を描いたフジテレビ『不毛地帯』(09年~10年)も力作だったが、視聴率は平均11.6%。今月13日からは、NHKで電機メーカーの下請け企業を舞台にした『七つの会議』がスタートし、こちらも見応え十分だが、初回の視聴率は6.1%。

 原作者は『半沢直樹』と同じ池井戸潤氏なのに、視聴率では随分と差が開いた。一体、どこに違いがあるのだろう?

 まず、『半沢直樹』の舞台はメガバンク(東京中央銀行)で、身近だ。銀行口座を持たない人は、ごく少数だろう。加えて、描かれている世界が、割とみみっちい。これも親近感を生んでいる気がする。醜い出世争いや不毛な派閥抗争など、卑近な世界だ。平気で嘘をつく上司、社益よりも自分や派閥の損得を最優先する人々---。「いる、いる」と頷きながら見ているビジネスマンは少なくないのではないか。

 企業側のインモラルな労務管理の実態も描かれており、今日性もある。企業を舞台にしたドラマの中には、嘆息するほど現実味に欠けた作品もあるが、東京中央銀行はまるで隣の会社のようだ。

 なにより、半沢直樹のキャラクターがいい。負けず嫌いの熱血漢。上司に媚びない硬骨漢でもある。正義感も強く、社内のローカル・ルールよりも自分の信念を優先する。半面、仕事を離れれば心優しく、妻(上戸彩)や仲間を大切にする。過去のビジネスドラマでは、あまり見られなかった快男児だ。

 もしかすると、昭和の名作ドラマ『どてらい男』(1973年~、フジ系)のモウやんこと山下猛造(西郷輝彦)に近いのかも知れない。メガバンク、機械問屋と勤務先は異なるが、モウやんも熱血漢で不屈の人。上司だろうが、大口顧客であろうが、理不尽な相手には絶対に頭を下げなかった。逆に弱いものイジメはせず、成功した後も信念を貫き通した。半沢もモウやんも現実にはそういないが、日本人に愛されるキャラクターなのだろう。

 視聴者に媚びていないところもいい。良い意味でサービス精神がなく、専門用語や隠語の説明がほとんど省かれている。第2話では、大阪国税局統括官の黒崎(片岡愛之助)が部下に対し、倒産企業の元経営者・東田(宇梶剛士)の「たまり」を調べるよう指示する場面があったが、その意味の説明はなし。くどくどと解説しなくても雰囲気で分かるのだから、あえて省いたのだろう。

 結果的に物語の妙味が崩されず、良かった。「たまり」とは、多くの人がご存知だろうが、裏経済の隠語であり、脱税で不正につくられた資産を指す。

 ほかにもクレジット・ファイル(信用情報)などの専門用語が目白押しだが、いずれも解説はほとんどない。説明過多のドラマは、平仮名ばかりの文章と同じで、見る側を興ざめさせてしまうから、サービス不足は功を奏している。

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