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アシアナ航空機事故に学ぶ「九死に一生のノウハウ」
事故の原因として、エンジンが鳥を巻き込み失速する「バードストライク」や、航行中、燃料が凍ってしまう現象などが考えられている〔PHOTO〕gettyimages

「あれだけの大事故で死者が2名にとどまったのは、奇跡的なことだと思います。本格的な火災が発生する前の10分間に乗客乗員が脱出できたことが分かれ道になったのでしょう。乗客は互いに声をかけあいながら落ち着いて脱出し、客室乗務員は涙を流しながらも冷静に誘導をしていたそうです」(在米ジャーナリスト)

 7月6日(現地時間)、韓国・アシアナ航空214便のボーイング777型機(以下、B777)が米サンフランシスコ国際空港で着陸に失敗した。就航以来18年間、一度も死亡事故を起こしたことがなかったB777で、乗客乗員307人のうち182人が負傷、2人が死亡する大事故が起こったのだ。

「今回の事故は、快晴、管制官とのやりとりも正常に行われていたという好条件のなか発生したもの。不可解な点が多いのです」(航空評論家・秀島一生氏)

 謎の一つは、「不自然な失速」だ。事故機は着陸の際の速度、高度が不足していたため、滑走路の岸壁に尾翼をぶつけた。操縦室にあったボイスレコーダーの解析によって、着陸の7秒前に「速度が十分ではない。速度をあげろ」というやりとりがなされていたこと、そして、着陸4秒前には「速度不足」の警報が鳴り、わずか1.5秒前に着陸をやり直そうとしていたことがわかっている。

 事故機を操縦していたのは、B777の操縦訓練中の副機長。B777でサンフランシスコ空港に着陸するのは初めてだったが、それだけが事故の原因とも考えづらい。

「今回は、隣に教官役の機長が乗っていました。機長も失速に気づかないとは考えにくい。不自然な失速です」(前出・秀島氏)

 二つめの謎は「エンジン異常」だ。事故後、複数の乗客が、「着陸の直前、片方のエンジンから火が出ていた」「エンジンの異常音を聞いた」と証言している。アシアナ航空社長の尹永斗(ユン ヨン ドウ)氏は「エンジンに異常はなかったと把握している」と会見で述べているが、乗客に対しての詳しい聞き取りはいまだなされていない。

 三つめの謎は、機の左側エンジンが離脱していることだ。着陸の際、滑走路の誘導灯に引っかかって機体から外れたとされる。しかし、9日現在、エンジンは発見されておらず、詳しい離脱の原因はわかっていない。もともと機体に問題があった可能性も捨てきれない。

 アメリカ時間の8日、ようやく機長、副機長の聞き取り調査が開始されたが、これだけの謎を解明するには時間がかかるだろう。

生き残るためには

 今回、本誌は生き残った乗客の一人、ベンジャミン・レビー氏に話を聞くことができた。レビー氏は、サンフランシスコ近郊に住むベンチャーキャピタル勤務の39歳だ。

―どの座席に座っていましたか?

「30Kという席。飛行機の右翼のすぐ後方、窓側の席でした」

―着陸の際の状況はどうでしたか?

「飛行機が着陸しようと高度を下げたときに、窓から外を見て、おかしいと思いました。まだ滑走路が見えてもいないのに明らかに高度が低く、海が迫ってきたのです。岸壁にぶつかったときは、自分が機内のどこにいるのかわからなくなるほどの衝撃でした」

―負傷はしましたか?

「肋骨を強く打ち、激しい痛みに骨折したと思いました。検査の結果打撲とわかりましたが」

―避難はスムーズに進みましたか?

「飛行機が停止したとき、私のまわりでは火災も見られず、すぐそばの緊急ドアからシューターを出しました。私はほかの乗客が脱出するのを手伝いました」

―焦りはありましたか?

「そのときは煙が少し出ているだけだったので、『もうこれで死ぬ』というような感覚はありませんでした。乗客の大半も落ち着いていました。でも実際は、その15分後くらいに飛行機が完全に煙に包まれていました」

 大事故では、生と死は、ほんのわずかな差で分かれる。冷静に行動し、互いに助けあうこと―事故経験者のナマの証言から、「九死に一生のノウハウ」が見えてくる。

「フライデー」2013年7月26日号より

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