「講座: ビジネスに役立つ世界経済」 
【第11回】 ~世界は本格的な金利上昇局面に入ったのか?~

〔PHOTO〕gettyimages

 このところ、世界的に長期金利の上昇傾向が顕著になっている。例えば、7月12日時点の米国10年物国債利回りは2.61%で、2013年当初の1.86%から80ベーシスポイント程度上昇した。日本の10年物国債利回りも、4月4日の日銀による量的緩和拡大(「異次元緩和」)直後に0.3%台に近づいた後、乱高下し、現在は0.8%台で推移している。50ベーシスポイントの上昇である。他国もほぼ同様の動きである。

 世界主要国の長期金利は、90年代前半以降、米国長期金利との連動性を高めている。これは、世界的な金融取引規制緩和もあり、グローバルレベルでの資金の流れが活発化しているためだと言われている。リーマンショックによる世界的な信用収縮で、グローバルレベルでの資金の流れが滞り、各国の長期金利の連動性が失われ、今後も世界的な長期金利の連動性は薄れるだろうとの見方もあるようだが、それは誤りである。

 世界的な長期金利の連動性低下の大きな理由は、単に、財政危機による財政プレミアム上昇でユーロ加盟国(ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリア)の長期金利が高騰したためである。これらの「ソブリン危機国」の長期金利を除去して、世界主要国の長期金利(10年国債利回り)の米国長期金利(10年国債利回り)との相関係数(ただし、5年でローリングしている)をみると、リーマンショック後の急低下後、上昇し、現在はほぼ1近辺(すなわち、米国長期金利にほぼ連動)で推移している。

 すなわち、財政危機による長期金利高騰に見舞われていない国々の長期金利は、最近になって米国長期金利との連動性をますます高めているのである。

世界の長期金利は米国の長期金利動向で決まる

 ところで、90年代前半以降、主要国の長期金利の相関係数の動きをみると、相関係数が大きく低下するのは、「バブル崩壊」後の金融危機時であり、金融危機からの回復が進むに従って、相関係数は1(相関係数が1というのは、主要国の長期金利の動きがほぼ米国長期金利と同じであることを意味する)へ向かって上昇していることがわかる。

 より具体的にいえば、主要国の長期金利の相関係数が大きく低下したのは、1992年(欧州、米国、日本など世界的な不動産バブルの崩壊)、1997-98年(アジア通貨危機、ロシア通貨危機、LTCMの経営破綻)、2001-02年(米国でのITバブル崩壊)、2008-09年(リーマンショック)であった。だが、いずれの局面でも1-2年程度で相関係数はまた元の1近くに戻っている。

 その意味で、世界の長期金利の行方を決めるのは今後も米国の長期金利動向である可能性が高い。そこで、次に米国長期金利の動向を考えてみよう。

 最近の米国長期金利の上昇の理由について、市場は、米国景気の回復の反映とみなしているふしがある。米国株式市場の活況との関連(すなわち、株価の上昇を伴った長期金利の上昇)やFRBによる早期の出口政策開始(債券購入額の縮減)はそれに分類されるだろう。特に、市場では、株価の上昇局面で、長期金利が上昇するのはある種、「当たり前のこと」とポジティブにとらえる向きがある。

 だが、過去における米国株価と長期金利の関係はそれほど単純ではない。米国株価と長期金利が正の相関関係にあったのは1998年から2010年までであり、その後はむしろ、逆相関(米国株価の上昇とともに長期金利は低下する)に転じており、現時点(2013年6月末時点)で、両者の5年ローリングの相関係数は-0.53である。

 すなわち、因果関係の検証は別途必要であるが、米国株高と共通の要因が現在の米国長期金利を上昇させている訳ではないと思われる。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら