ブルーバックス前書き図書館
2013年07月18日(木)

『日本の深海』
資源と生物のフロンティア
瀧澤美奈子=著

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日本は世界第1位の深海大国!
深海底に広がる豊かな地形、資源、生物!

 日本の「海の広さ」は世界第6位で、そのほとんどが深海である。さらに、水深5000メートル以深の海水保有体積ならば、世界第1位。つまり、日本は世界屈指の「深海大国」といえる。その実像はこれまで謎に包まれていたが、調査船の進歩などにより、少しずつ明らかになってきた。それは、私たちが想像していたよりもはるかに豊かな世界である。起伏に富んだ地形、豊かな資源、知られざる生物、地球環境への貢献など、多角的な視点で、日本の深海の姿を紹介する。

(注・水深5000m以深の領海・EEZにおける海水保有体積が世界第1位。OPRFニューズレター123号「わが国の200海里水域の体積は?」より)

 

はじめに

「生きている化石」と呼ばれるミツクリザメをご存知だろうか。
 体長五~六メートルにもなる巨大な深海魚で、じつは東京湾にも棲息している。東京湾も沖に出ると七〇〇メートルの水深となるので、深海魚が棲息できるのである。

 東京湾のすぐ近くの相模湾の水深は一六〇〇メートル。さらに隣の駿河湾に至っては水深二五〇〇メートルという深さになる。日本列島は、まわりを広大な海に囲まれているが、じつはそのほとんどは深海である。

 どれくらいの深さを深海と呼ぶのかは厳密に決まっているわけではないが、海洋生物学では、光合成に必要な量の太陽光が届かなくなる水深二〇〇メートルより深い海と定義することが多い。また地質学では水深二〇〇〇メートルより深い海が目安となっている。どちらにせよ、日本の海はほとんどが深海である。

 日本は小さな島国で、領土面積は世界第六一位にすぎない。しかし領海と排他的経済水域を合計した面積では世界第六位である。それだけではない。水深五〇〇〇メートルより深い海域の体積は、なんと「世界第一位」というデータもある。つまり、日本は「深海大国」なのである。

 日本の海が深いのは、複数の海溝が近海の海底に深い谷を刻んでいるからである。北から千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、南海トラフ、南西諸島海溝と五つの海溝(トラフ)が縦横に走る。一つの国の海域にこれほど数多くの海溝を持つ例は、世界中ほかに見あたらない。

 五つも海溝があるのは、日本列島が四つのプレートの境界にあるためである。四つのプレートがひしめき合い、大陸プレートの下に海洋プレートが潜り込み、押されたり、ひきずられたり、活発な地質活動を続ける場所に日本列島が位置している。このことは私たちの日常生活に災禍をもたらす一方で、恩恵も与えてくれている。

次ページ  こうした災禍や恩恵は、陸から…
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