秋山仁さん、ピーター・フランクルさん推薦!
ナポレオンやデカルトまで虜にした魅惑の図形に迫る
もっとも単純な多角形でありながら、
紀元前の昔から数学者や
歴史上の偉人たちを魅了しつづけた三角形。
ピタゴラスの定理だけじゃない、
シンプルな形に隠された
美しくも不思議な性質の数々を紹介します。
読者は、三角形の七不思議と聞いて何を連想するだろうか。じつは、どれが「三角形の七不思議」かなんてものは誰も知らないのだ。三角形について不思議なことは山ほどある。本書では、その中からよりすぐりの「不思議」を7章に分けて紹介している。読者が道に迷わないようしっかりガイドしているので、第1章の正三角形の話からゆっくり読み進んでいけば、問題なく終わりまで楽しんでもらえるはずだ。
「正三角形」は英語で「レギュラー・トライアングル(regular triangle)」という。野球やサッカーで正選手のことをレギュラーというが、そのレギュラーに、角(アングル)が3つあるという意味のトライアングルがつくのだから、まさに三角形の代表だ。
ところが、この正三角形にも泣き所がある。それは「三角形の三要素」、すなわち、辺の長さ、角度、および面積である。正三角形の1辺の長さを仮に1としよう。3つの角度はいずれもきれいな60°になっているが、面積は4分のルート3という極めて半端な数になってしまう。
そこで、誰もがもっている2辺の長さが等しい「45°の三角定規」を見てみよう。その角度は、45°が2つと90°というきれいな値になっている。さらに、2本の等しい辺の長さを1にすれば面積は2分の1でわかりやすい。ところが、斜辺の長さはルート2という半端な数になってしまう。今から2000年以上前のギリシャでは、ピタゴラス学派と呼ばれた数学者たちが、それを秘密にして世間の人に気付かれないよう必死になって守ったという、信じられない話が残っている。
つまり、辺長、角度、面積の三要素がきれいな整数になる三角形など存在しないのだ。つまり、三角形はルートやコサインから逃れることができない。でも、スート3やcosθという記号に尻込みせずに、ちょっと頑張れば、三角形のもっているたくさんの素晴らしい性質を楽しむことができる。読者が自然にその世界に入っていけるように、章の順番を並べたつもりだ。一方、ルートやコサインはすでに知っているという人ならば、どの章を拾い読みしてもすぐに楽しめるはずだ。
もし、整数と平方根の違いなんてどうでもいいや、という人がいたら、どうぞこの本は閉じて、犬小屋へどうぞ。三角形の大事な定理をひとつだけ知っている犬と遊んでほしい。彼らも経験的に、「三角形の2辺の和は第3辺よりは長い」ということが身についているから、えさや獲物めがけて回り道をせずに真っすぐに走っていくのだ。
三角形の七不思議を、犬や小学1年生たちより、もっとたくさん知りたい人のためにこの本を書いた。ナポレオンがじつは数学大好き人間で、「ナポレオンの三角形」という大定理が数学の辞書にも載っている。デカルトという、これもフランスの大数学者が、論文を書く代わりに、数学好きのボヘミア王女にきれいな定理をプレゼントした。そういうことをもっと詳しく知りたければ、どうぞ、この本をゆっくりと読み進んで、三角形の不思議な世界の広さと楽しさを堪能してほしい。
推薦の言葉
三角形は単純な図形だが、驚くほどたくさんの美しく、かつ深淵な性質をもっている。三角形はすべての図形の基本であるとともに、未知の宝庫でもある。本書を読めば、三角形の素顔とその奥深さを知り「三角形バンザイ」と叫びたくなるでしょう。
●秋山仁(数学者、東京理科大学理数教育センター長)
全世界の中学生が学んでいる三平方の定理、これさえ知っていれば細矢先生の本を存分に楽しめる。難しい証明や複雑な数式がなく驚くべき事実や美しい図形が勢揃いする一冊で、まさに幾何学の美味しいところ取りである。数学に興味がある老若男女に必読だ!
●ピーター・フランクル(数学者、大道芸人)
目次
第1章 正三角形の不思議な性質
第2章 不等辺三角形の不思議な性質
第3章 ピタゴラスの三角形
第4章 ヘロンの三角形
第5章 三角定規で遊ぶ
第6章 アイゼンシュタインの三角形
第7章 二等辺三角形と黄金三角形