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特別レポート 第1部 創価学会 第2部 真如苑 こんなに変わってたんだ ニッポンの巨大宗教団体(2013)信者も知らない内情

第1部 創価学会
総工費170億円かけて新・総本部ビル完成、そして…

 普通に暮らしていればあまり意識することのない巨大宗教団体。だが、政治・経済・文化と密接に関わり、大きな影響力を及ぼしている。後継問題からおカネの話まで、宗教を見れば、現代社会のカタチが見えてくる。

「創価王国」—。そうとしか言いようのない空間が、東京・新宿区のJR信濃町駅周辺に広がっている。何棟もの創価学会の教団施設がそびえ、赤・黄・青の三色旗を掲げた土産物店が軒を並べる。

 本誌記者が訪れたある日曜日の午後、通りは大勢の学会員で賑わっていた。小さな公園には大学生と思しき若い男女が30人ほど集まり、信仰を同じくする者同士、楽しそうに談笑している。学会婦人部であろう妙齢の女性たちは三々五々、「接遇センター」(礼拝施設)を目指し、教団施設を見上げながら歩いていく。駅にほど近い土産物屋「博文栄光堂」では、礼拝を終えたのか、若い母親がライオンをかたどった"ゆるキャラ"「しなのん」のグッズを手に取って微笑んでいた。

 公称827万世帯の会員数を擁し、与党・公明党の支持母体でもある創価学会。日本一の宗教団体の"門前町"は、学会員にとって心地良い空間であることは間違いない。

 だが"部外者"にとって、信濃町はひどくよそよそしい場所だ。別の日、記者が教団の建物を確かめながら公道を歩いていると、「何かお探しですか」と、スーツ姿の男性が声をかけてきた。片方の耳にイヤホンをつけている。誰かと交信をしているのだろうか。こちらが「監視の方ですか」と問うと、慌てて、「ちょうど(警備の)交代の時ですから(声をかけただけ)」と偶然を装った。さらに歩くと、記者が行く先々に、インカムをつけた男が運転する軽自動車や自転車が現れ、こちらの様子を窺う。辻々には全方位を撮影できる監視カメラが設置されている。

 そんな「創価王国」の中心で、急ピッチで建設が進んでいる建物がある。「創価学会総本部」だ。鉄骨鉄筋コンクリート造で、地上7階、地下3階、敷地面積4814m2、建物の延べ面積1万8769m2。学会が東京都に提出した建築計画概要書によると、主要用途は「礼拝所」となっている。文字通り、学会の中枢となる"総本山"である。

 建築を請け負うのは、大手ゼネコンのジョイント・ベンチャーで、大成建設、大林組、鹿島建設、清水建設、竹中工務店の5社が名を連ねる。今年11月18日の学会創立記念日に落成する予定だ。ただ、工事は遅れ気味だという。

「日曜日は工事をしない約束だったのに、行わせてほしいと申し入れがあった。創立記念日に間に合わなかったらコトだから、焦っているようだ」(地元の商店主)

 創価学会広報室に問い合わせると、工事費は公表していないというので、大手デベロッパー関係者に総工費を試算してもらった。

「この手の宗教施設にかかる費用は、普通、建築だけで坪200万円、設備・設計で坪100万円。合計坪300万円といったところです。一般のビル建設が坪120万円ですから、かなり割高ですが、宗教施設には特殊な設備が必要ですし、資材にも凝ります。彼らはカネに糸目をつけません。これらのことを考えると、建物の延べ面積が約5678坪ですから、単純計算で約170億円になります」

※衆院選・参院選は比例代表における得票数。都議選は公明党候補の得票数の合計。数字は千の位で四捨五入をした

 それでもこの「総本部」は、当初の構想を大幅に縮小したものだという。創価学会関係者が明かす。

「もともと池田名誉会長は、かつて創価学会が総本山として信仰の対象としていた静岡県富士宮市にある日蓮正宗大石寺のような"聖地"を作りたかったのです。日蓮正宗と蜜月だったときは、大石寺登山が、学会員の一大イベントでしたから。そこで、池田名誉会長が目指したのは、信濃町全体のテーマパーク化です。当初の構想にあったのは、本部から200mほど離れたところにある池田名誉会長の旧自宅も合わせて開発し、道路も拡大して、一大宗教施設を作ることでした。ところが、本部に隣接した土地の地主がどうしても土地買収に応じず、計画は頓挫した。その結果、総本部は中途半端なものになってしまいました」

 この関係者によると、本部を総本山化する理由は、「学会員をコンスタントに集めないと、宗教的求心力が弱まるから」だという。

 求心力低下の背景には何があるのか。最大の原因は池田名誉会長が、'10年5月以来、公の場に姿を現さないことにある。ジャーナリストの段勲氏が言う。

「これだけ池田氏の姿が見えないと、機関紙の聖教新聞がいくら『池田先生は元気だ』と書いても、学会員も『本当だろうか』と、疑いの目で見てしまう。参院選を控え、これでは学会員の意気が上がらない。学会側は、『いまこそ立ち上がれ』といった内容の池田氏の檄文なるものを学会員にどんどん配って、引き締めに躍起になっています」

 先の東京都議選直後、学会職員に紹介された「池田名誉会長の伝言」と題されたメモにはこうある。

〈歴史に輝きわたる完勝おめでとう。(中略)日本中、世界中の同志が大勝利の万歳をしています。(中略)「勝って兜の緒を締めよ」。いま再び強盛に祈り、もう一度われらの鉄の団結を固めて、仲良く勝ち進もう。全同志にくれぐれもよろしくお伝えください〉

 都議選についての具体的な言及はなく、一般的な内容のように映る。これを読んだ現役の学会員が言う。

「伝言は何も言っていないに等しい。実は池田名誉会長は、思ったよりも体調が思わしくなく、自ら学会や公明党の指揮を取れるような状態ではないそうです。池田名誉会長のお言葉も執行部が過去の発言をなぞって出しているだけではないでしょうか」

長男は世襲できるのか

 しかし、学会側は御年85歳の池田氏の体調は良好だと強調している。『文藝春秋』の今年1月号には池田大作夫人の香峯子さんが登場し、「(主人は)ラジオ体操を若い人たちと一緒にするのが、今も日課となっています」と述べている。また、6月30日付の聖教新聞は、池田氏が創価大学(東京・八王子市)を訪れたと報じた。

 そうであるなら、学会員の前に姿を現すことぐらいできそうなものだが、会員と触れ合う様子を報じる写真は公開されていない。

 そのため、ますます一般の学会員の不安が高まり、学会側はその不安をなだめるのに躍起になっているという。その一つの手段が、参拝者の管理だ。

「現在、参拝に訪れた人は所属組織の名前を書いたうえで、指紋認証を行ってから入館するようにしています。池田名誉会長をひと目に触れさせないようにする学会職員らの態度に不満をもった学会員が何をしでかすかわからないから、厳重に警備をしているんです。実際、館内で暴力行為に及んだ学会員もいます」(前出・現役学会員)

 本誌記者も礼拝施設に入る婦人が、機械の上に手をかざしているのを目撃した。身内のはずの学会員まで警戒しなければならないほど、学会内部が揺れているのは事実のようだ。

 それを如実に示すのが、公明党の得票数だろう。今回の東京都議選で公明党は全員当選を果たしたが、得票数自体は前回より10万票減らした。上のグラフを見るとわかるように、得票数は'05年をピークに下がり続けている。背景を宗教学者の島田裕巳氏が分析する。

「国政選挙や都議選で公明党の票数が少なくなっているのは、実際に選挙活動を積極的にする学会員が、かなり減っているからでしょう。その大きな原因は、やはり池田大作氏が表に出なくなったこと。学会員にとっては池田氏と直接会って励まされたという体験が重要なんです。彼が全国を回って学会員と対面してきたのが大きい。それができなくなって求心力の源がなくなってしまった」

 池田氏個人のカリスマ性が、学会員を引きつける大きな原動力だった創価学会。その池田氏の事実上の不在で、今後どうなるのか。学会関係者が言う。

「谷川佳樹副会長と正木正明理事長が学会の将来を担うと見られています。谷川氏は実務派、正木氏は人情派。現学会執行部は、原田稔現創価学会会長の後継者に谷川氏を据え、長男の博正氏を現在池田氏が就いているSGI(創価学会インタナショナル)の会長に据えるハラのようです。谷川氏が会長になれば、正木氏は学会最高顧問に祭り上げられるのではないかと、内部では見られています」

 なぜ、長男の博正氏を学会の会長にしないのか。ジャーナリスト・乙骨正生氏が解説する。

「日本の創価学会は、組織上SGIの下部組織に過ぎません。池田氏亡き後は、教祖の子息が神聖さを維持しなくてはならない。そこで、学会会長は実務能力の高い谷川氏に任せ、SGI会長に聖なる池田家の長男である博正氏を据えるということでしょう。これにより、SGIが持つ莫大な海外資産も博正氏が自由に動かせるようになる。ただ、博正氏に父親のようなカリスマ性があるとは思えません」

 もし11月18日の落成式にも池田大作氏が姿を現さないとしたら……そのとき創価学会に激震が走ることになるかもしれない。

第2部 真如苑
教祖交代! 東大卒のエリートがトップで大丈夫?

 東京都立川市、午前4時45分—。立川駅南口に約30名の老若男女が集まっていた。ひとかたまりになった彼らは、蛍光色のジャンパーを着た男性の話を注意深く聞いている。清掃箇所の割り当てのようだ。5時になると集団は整然と清掃作業を始めた。私語を発する者はほとんどいない。

「早朝奉仕」と呼ばれるこの活動を行っているのは真如苑の信者たちだ。

 真如苑は、京都・醍醐寺で得度した伊藤真乗氏が1936年に始めた仏教系新宗教である。真乗氏の妻で「霊能者」であった友司氏と二人で信者を獲得していった。現在は宗教色を前面に押し出すことはせず、社会奉仕を活発に行うことで、地域社会との融和をはかっている。本部は立川駅の南口側に位置する。

 その立川駅からモノレールに乗り、5分足らずの立飛駅に降り立つと、巨大な建築物が姿をあらわす。真如苑が'06年に作った総合道場「応現院」だ。敷地面積2万7000坪、1万人以上を収容できるという。

 記者が訪れたのは平日の昼間だったが、それでもモノレールの駅から数十人が、応現院を目指して歩いていた。そのうちの一人、ベビーカーを押していた若い母親に話を聞いた。

「感動でしょう? 私なんか、初めて(応現院を)見たときは感動して泣いちゃいましたよ。今日は親子で接心を受けにきました」

 接心とは真如苑特有の宗教行為で、修行を積んだ「霊能者」が信者の悩みを受け止め、日常生活の心構えなどのアドバイスを行う。接心のために信者が支払う費用は1000円からで、最高でも8000円だ。

 既存の新宗教が少子高齢化や宗教離れで信者数を減らしていくなか、真如苑は毎年1万人程度の信者を増やし続けている。いわば"勝ち組"の宗教団体だが、水面下で異変が生じつつある。今年3月の伊藤真聰苑主(71歳)の発言で、それが表面化した。

「私ども二人の後継について妹(伊藤真玲氏=69歳)と話し合いを重ねてまいりました。次期後継者として教務長補佐の鳥飼尚之さんを指名いたします」

 信者数90万9603名(公称)を誇る巨大教団のトップが突如、"苑主交代"を明言したのだ。真聰苑主には子供がおらず、その後継者に伊藤家と血のつながりがない教団幹部を指名。真聰苑主が健在のうちは、これまでと同じように教団の運営が行われるという。

 次期苑主はどのような人物なのか。鳥飼氏は秋田県生まれで、東京学芸大附属高校から東京大学薬学部に進学し、大学院を修了した秀才だ。

「親の代からの熱心な信者で'81年に真如苑に"就職"。教学部や国際部の部長を歴任してきたエリートです。修行にも熱心で、霊能者としての能力も高い。人柄は極めて温厚、物静かな人物です。私は鳥飼先生に仕事関係のアドバイスを求めて何度か接心をしてもらいましたが、俯瞰した視点を持っているという印象を受けました」(真如苑関係者)

 一方で組織を束ねるカリスマ性に乏しいとの指摘があるのも事実だ。

『宗教とカネ』の著者で、ジャーナリストの山田直樹氏が解説する。

「日本の新宗教は教祖の死によって跡目争いがしばしば起き、決定的な分裂にいたるケースも多いんです。たとえば岡田光玉氏が'59年に興した『世界真光文明教団』は、光玉氏の死後、『崇教真光』が分派しました。『パーフェクトリバティー(PL)教団』も『生長の家』も、教団のトップが亡くなってから、分裂騒動が起きています。

 真如苑の鳥飼氏の評判を聞くと、"能吏"という声が多い。かつて真如苑はお家騒動で揺れ、三女・真聰氏が後を継いだ経緯があります。鳥飼氏への継承がすんなりいくかは疑問です」

 真如苑はこれまで、その"金満"ぶりでもたびたび世間の度肝を抜いてきた。

 '01年には日産の村山工場(東京・多摩地区)を約739億円で、'08年には運慶作とされる大日如来坐像を14億円で購入。一説には年間の収入額が約450億円とも言われる。

 巨額資産と90万信者を抱える教団の運営が、温厚な東大卒エリートに務まるのか。真如苑もまた、岐路に立たされている。

〈第3部・第4部につづく〉

「週刊現代」2013年7月20日号より

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