中国
米中G2時代に日本は存在感を保てるか!? 「米中戦略・経済対話」に見る中国のアジア太平洋政策
〔PHOTO〕gettyimages

 「ニュータイプの大国関係を築く」---習近平主席の対米外交の方針に沿って、中国政府の数百名もの要人たちが、ワシントン入りした。

 第5回「米中戦略・経済対話」が、7月10日、11日の両日、ワシントンで開かれた。これは、ブッシュ政権の2006年から始まった「米中戦略経済対話」を、オバマ政権時代になってさらに拡大したものである。文字としては「戦略」と「経済」の間に「・」を入れたにすぎないが、これには大きな意味がある。

 それまでは代表を一人ずつ置いて、すべて一緒くたにして表面的に議論していたものを、「戦略(外交)部門」と「経済部門」とに分け、それぞれに代表を置き、より突っ込んだ実務責任者同士が一気に議論できる場としたのである。中国はこれに「軍事部門」も入れて3部門制にしようと提案したが、アメリカは却下している。

 こうして新たな体制となった「米中戦略・経済対話」は、米中G2時代を象徴する枠組みとして、アメリカ発の金融危機の影響が収まらなかった、2009年7月27日~28日に、ワシントンで第1回が開かれた。続いて、2010年5月24日~25日の第2回北京大会、2011年5月9日~10日の第3回ワシントン大会、2012年5月3日~4日の第4回北京大会と開催された。今年は3月に中国で10年ぶりの政権交代が行われたことで、やや遅れて7月の開催となったのである。

 アメリカ側は、ケリー国務長官(夫人の緊急入院で初日のみ参加)とルー財務長官以下、14省庁の大臣級が、中国側は汪洋副首相と楊潔虎国務院以下、16省庁の大臣級が参加した。4代表とも今回が初参加である。いわば、北京の国務院が、丸ごとワシントンに引っ越してきた様相を呈したのである。

衝突せず、対抗せず、相互に尊重し、提携してダブルウィンを得る

 今回は、6月7日、8日にオバマ・習近平の8時間会談から1ヵ月を経て、この時のトップ対談の「決定」が、どう実務者に降りてくるのかということが注目された。2大国のトップが、2日間で8時間以上も話し合っていながら、アメリカの同盟国のはずの日本にも、その詳細はまったく伝わってきていなかったからである。その意味で、今回の米中対話は、2大国の真意、とりわけ情報公開の少ない中国の真意を確認するという場でもあった。

 まず第一に、先月の米中首脳会談で、習近平主席は、「今後アメリカとニュータイプの大国関係を築く」と述べたが、これが具体的に何を意味するのかは不明だった。しかし今回、楊国務委員は、「ニュータイプの大国関係とは、不衝突(衝突せず)、不対抗(対抗せず)、互相尊重(相互に尊重し)、合作共赢(提携してダブルウィンを得る)関係である」と定義付けをしたのだった。

 これは先月、習主席が述べた「中米は、太平洋を挟む東西の2大国家であるから、友好関係を築いてアジア太平洋地域の発展の牽引役を果たすべきだ」という論理を、より具体化したものだ。

 楊国務委員はまた、習近平時代の新たな中国のアジア太平洋政策の3原則についても言及した。

①不挑事(挑発しない)、也不怕事(だが恐れもしない)
②以和平為基調(平和をもって基調とし)、以合作為渠道(提携をもってルートとし)、以共赢為目標(ダブルウィンをもって目標とする)
③共同安全(共に安定を守り)、共同発展(共に発展する)

 これは、尖閣諸島問題について照らし合わせてみると分かりやすい。中国側の論理で言えば、「釣魚島(尖閣諸島)は、わが国の固有の領土であるから、監視船などを日々繰り出すことは、自国の海域を警備しているだけであって、日本に対する挑発には当たらない」。そして、「日本が中国を脅威とみなす防衛白書を承認したことについて猛烈に抗議し、日本を恐れていないことを示威する」。こうしたことは、日本にとってみれば十分、挑発行為なのだが、中国側の論理ではそうはならないのである。

 さらに中国側の論理を言えば、「原則の②と③に照らして、釣魚島の共同開発も含めた平和的提携の道を提案しているのに、日本側が無視している」ということになる。これは、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」とする日本政府の見解とは大きく異なる。

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