ドイツ
15年ぶりに過ごす、とりわけ暑い日本の夏
〔PHOTO〕gettyimages

 日本にはしょっちゅう滞在しているが、用もないのに、わざわざ蒸し暑い日本にいる理由もないだろうと、たいてい7月の初めには逃げ出してしまう。だから、最後に日本の8月を過ごしてから、かれこれ15年ほども経つ。

 30年もドイツで暮らしていると、身体はドイツの気候に馴染んでいる。だから、暑さにはめっぽう弱くなってしまい、昨年の7月には、まだ本格的に夏が始まってもいないのに、クーラーを掛けて寝ていたような始末だ。その代わりに冬には強い。東京で皆が、「今日の風は身を切るように冷たい」などと話しているのを聞くと、「エッ、どこが?」と思う。

 ところが、今年はいろいろな事情が重なり、夏中、日本に滞在することになった。帰国を控えた私を、友人たちが脅かす。「今年は40度になるんですって。あなたは慣れていないから、体調を崩すわよ」とか、「昼間は一歩も出られない。だから、うちの医院は患者さんも来なくなるの」とか。真実なのか、嫌がらせなのか。

夏の生活をエンジョイするドイツ人

 ドイツの夏は、湿度が低くて快適なうえ、あちこちにお花が咲き乱れて美しい。加えて、日が長いので、勤めを終えた人がプールに行っても、十分楽しめる。プールはたいてい広々と芝生の広がった公園のような趣で、木立の下にマットを広げてのんびりピクニックのできる自然派プールである。

 このように書くと、私がそういうところへ好んで行っているようだが、それは違う。私のプール歴は、子供たちに付き合わなければいけなかった時代が終わると同時にめでたく終了。水は、温泉以外は嫌いなので、プールはもう死ぬまで行かない可能性が高い。

 夏の宵は、森を散策、あるいは、ジョギング、あるいは、サイクリングする人たちも多い。都会といっても、すぐ近くに森や林がたくさんあるし、ドイツ人は基本的に森をさまよい歩くのが好きなので、夏の夕方の森は結構人口密度が高い。ところどころにレストランもあり、緑の中に並べられたベンチに陣取って、ビールを飲んだり、軽食を摂ったりというのは、とても楽しい。

 夏、音楽会やお芝居に行くと、途中の休憩のとき、まだ戸外は明るく、これがまた何ともいえず良い感じなのだ。お洒落をした人たちが、シャンペンのグラスを手にテラスに出たり、あるいは、劇場前の広場に佇んだりしている光景は、なかなか風情がある。夕方の日の光がすべてを柔らかく包み込み、空気は爽やかで、鳥のさえずりが聞こえる。全員とは言わないが、ドイツには、生活をエンジョイしている人たちが多いようだ。

 ドイツ人が経済成長を、余暇や自然を犠牲にせずに達成したことだけは、非常にあっぱれだったと思う。そのうえ、年に6週間の休暇もばっちりと取るのだから、考えてみれば、仮に少々収入が低くても豊かな生活といえる。ただ、多くのドイツ人は、自分たちは働き過ぎだと信じている。

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