「佐藤優氏の参院選出馬報道」、「エジプトで暫定大統領就任にみるトルコの混乱といまだ未着地のアラブ春」
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol017 くにまるジャパン発言録より
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol017 目次】
―第1部― インテリジェンスレポート
 ■分析メモ No.38 「エジプトのクーデターと『アラブの春』のパラドックス」
 ■分析メモ No.39 「アルバニア議会選挙」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.47 『戦時下のドイツ大使館 ある駐日外交官の証言』
 ■読書ノート No.48 『「第5の戦場」サイバー戦の脅威』
 ■読書ノート No.49 『政権崩壊 民主党政権とはなんだったのか』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤さんの今後の予定(8月下旬まで)
現代ビジネスからのお知らせ

邦丸: いやー、今週の火曜日、びっくりしましたけど、7月2日付けのスポーツ報知の社会面に「佐藤 優氏、新党大地から参院選出馬へ」という見出しが出ていまして、これを見て、おい、ちょっと待てよ、今週の金曜日のコメンテーターは佐藤 優さんだよなあと……。

佐藤: 大選挙演説をしかねないと。

邦丸: 公示しちゃった後だと、番組に立候補者を出すというのはなかなか難しいということもあるので、おい、どうなんだと。優さんに連絡をとろうと思っても、なかなかうまくいかずにいたところ、結局その日の夕方、新党大地の鈴木宗男代表を激励する会が開催されて、そこで佐藤さんが「聞いてないよ、そんな話」とおっしゃった。

佐藤: そうなんですよ。朝早くから電話がガンガン鳴るんですね。国際電話はちょっと音が違うからわかるんですが、国際電話じゃなかったから取らなかったんですね。国際電話なら、スノーデン事件か何かでモスクワからかなあと思ったんですけど。でもあまりにしつこいから取ったら、詰問調なんですよ。「なんでもっと早く言ってくれなかったんですかっ」と。

佐藤: ある編集者なんです。要するに、今、邦丸さんがおっしゃったように、候補者はテレビやラジオだけでなく、雑誌にも寄稿できないんですよ。そうすると、もうゲラになっているのに、私の書いたものが出せないということになったら、そのページが白になる。今からではもう技術的に誰の原稿も入れられない。もう広告を入れるしかないじゃないですかと、詰問調なんですよ。「え、何の話ですか?」と聞いたら、今日の新聞に「立候補」と出ているという。そんな事実もないし、僕は取材も受けていない──と、こういう話なんですよ。

伊藤: 取材もせずに出馬決定と書くなんて、すごいですね。

佐藤: だから真相を調べたんですよ。そうしたら、どうも鈴木宗男さんに非常に近い人が、「実は隠し玉がある。鈴木宗男さんと長ーーーく付き合っていた外務省の人で、それ以上は言えない」と・・・・・・。

邦丸: はははは。

佐藤: そうしたら、いつの間にか私だということになっちゃったんですよ。

深読みジャパン

伊藤: 共同通信から。「エジプトで暫定大統領就任」。

 軍のクーデターから一夜明けたエジプトでは7月4日、権限を剥奪されたムルシ大統領に代わり、マンスール最高憲法裁判所長官が暫定大統領に就任し、暫定政権づくりが本格化しました。マンスール氏は就任演説で、クーデターを起こした軍を「国の良心を体現した」と称賛し、「国民が発した命令に基づいて暫定大統領の職を受け入れる」と表明しました。

 また、強権的な政治姿勢で反発を招いたムルシ政権を念頭に、「国民の意思に基づく選挙を実施する」と述べ、挙国一致の姿勢を強調しました。マンスール氏は就任式後、記者団にムルシ氏の出身母体であるイスラム組織「ムスリム同胞団」について、「国民の一部であり、国づくりへの参加を歓迎する」と述べました。

 しかし、一方では反クーデターを警戒し、イスラム勢力に対する圧力が強化されています。エジプト当局は4日までに、ムスリム同胞団の最高指導者バディウ氏や同胞団系の政党の党首ら幹部2人を逮捕し、同胞団員300人の逮捕を命じました。

邦丸: エジプトは「アラブの春」と言われまして、それまではずっと軍のいちばんトップの人たちが大統領になっていた。

 今回、ムルシさんという、既に前大統領になっちゃってますけれど、この人が初めて民政選挙で選ばれた文官であるということなんですが、いずれにしましてもイスラム的な考えを強く押し出そうとしたことに対して、エジプト国民、いわゆる世俗派と言われている人たちが、「冗談じゃねえよ、そんなはずじゃなかっただろう」ということで、大規模なデモがあって、最終的にまた軍が前に出てきて、ここでまた新たな選挙をしようじゃないかということのようなんですけれど、佐藤さん、どのようにご覧になりますか。

佐藤: そうなんですよね。民政選挙というのはエジプトはずっとやられてきてはいるんですよ。最初はクーデターで、その後は民政選挙。それで「軍」というのは、たとえばピラミッドのそばでラクダを引いて観光客に「乗りませんか」とやっている、あれも軍なんですよ。
(略)

佐藤: 軍の利権はものすごくあるの。高層ビルのデベロッパーも軍だし、航空会社ももちろん軍だし、農業も軍だし。巨大な利権集団なんですよ。

邦丸: エジプト軍というのが。

佐藤: エジプト軍です。だから国軍の幹部というのが、軍事だけではなくてエジプトのほとんどのエリート層をとっていた。それに対して、この前のムバラクさんの時代から腐敗が起きているし、富の分配が不平等じゃないかと。エジプトは大国なのに、なんで圧倒的大多数の国民がこんな貧しい生活をしているのかということで、政権交代「アラブの春」が起きた。

邦丸: ふむ。

佐藤: それでアラブの春が起きたら、今度は取りあえずは穏健にいくって言っているけれども、やっぱりムルシ前大統領のやり方を見ていると、だんだんイスラームの強権的な支配にしていって、形は違うけどもイランみたいな感じとか、タリバーンのときのアフガニスタンみたいなそういう方向になっていくんじゃないかと。こういう心配もある。

 あともうひとつ、エジプトという国は、イスラーム教徒だけじゃないんですよ。あそこはキリスト教徒が多いの。特に、コプト派という、いわゆるローマカトリック教会とかプロテスタント教会なんかの正統派とは違う、もっと前に分かれた教会があるんですよ。エジプトという国は、このキリスト教徒とイスラーム教徒たちが手を握って、キリスト教、イスラーム教じゃなくて、エジプト人なんだという形でつくろうということでできた国なので、この世俗主義というものとも、原理主義があまり進むと今度はキリスト教徒が排除されちゃう。

 こういう要素があるんで、国家が危機的な状況になったと。そういったときには、いつも軍が出てくるんですよね。だからこういうことが起きたということなんです。ただ、これはエジプトだけの話ではない。だから、アラブの春からもう1回、今度は民主制というものを否定して軍が出てくる「アラブの冬」というものが始まった。これがアラブだけじゃなくて、トルコに及ぶかもしれない。

邦丸: トルコも今、イスタンブールの大きな公園に国民のみなさんが集まって、政府に対する抗議集会を開いていたのを政府が排除して。

佐藤: 力で排除した。

邦丸: 排除されたのが今度は分散し始めたということですね。

佐藤: そういうことになります。ですから、エルドアンさんという大統領も本当はイスラーム主義なんです。ただ、徐々に徐々にやっていこうと。トルコというのはイスラーム主義に傾きそうになると、必ず軍が出てくるんですよ。

 今回のきっかけになっているのは、夜間の酒の販売禁止なんですよね。そうすると、「あれ? お酒を売ってはいけないということになると、これを段階的に進めてきてイスラーム主義に行くんじゃないか」と、これを世俗派が警戒している。だから今回は治安警察は弾圧の方向で協力したけれども、必ずしもこの先もそうだとは限らないですからね。・・・・・・

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら