二つの銀行ポストを狙った
財務省の「政権統治」

「菅落ち」で鳩山内閣は最強官庁のいいなり

 鳩山政権に対する財務省による統治は完全に終わった。もちろん鳩山政権が財務省を支配するのではなく、財務省に屈服したのだ。いろいろなところでその兆候が見られる。

 そもそも鳩山由紀夫首相の「子ども手当」が贈与税の脱税になるかどうかは、税務当局(財務省)のさじ加減でどうにでもなることだ。

 鳩山首相に対して「これまでお母さんと相続について話したことがありますか」という質問をすればいい。お母さんに対しても同様の質問をすればいい。

 いずれも答えは自明の理であろう。あの年齢で話し合わないはずない。もしもの場合に困るからだ。いずれにしても鳩山首相は財務省に大きな弱みを握られたものだ。

 また政策金融における財務省の復権も露骨だ。財務省が重視してきた政策金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行の二つである。名前に「銀行」とつくのがそのプライドを表している。他の政策金融機関は「公庫」という名前であり、「銀行」はそれより高いという位置づけになっている。

 二つの銀行は、財務省の歴代事務次官の天下り先である。具体的な天下り状況については、中川秀直ブログ中の『政府答弁書をみやすくしました(日本政策投資銀行編)』、『政府答弁書をみやすくしました(日本政策金融公庫・国際金融部門編』が、それぞれ詳しいので見て欲しい。

「大和と武蔵」を失った財務省

 財務省は天下りの面倒見がいい。その頂点に立つのが二つの銀行だ。この二つの銀行における財務省の復権は、とりもなおさず財務省が鳩山政権を掌握したといえる。

 それをよりよく理解するために、政策金融機関の歴史に触れておこう。小泉政権の前には、日本政策投資銀行、国際協力銀行、商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫と9機関があった。

 それぞれ、財務、財務、経産、財務、国交、農水、経産、総務、財務が歴代トップを送り込む天下り先だ。

 小泉純一郎氏が改革しようとすると、各省の権益を代弁した橋本龍太郎氏が「指一つ触れさせない」と豪語したことは有名である。小泉政権下で、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫は完全民営化、残りは、基本的には規模半減し、日本政策金融公庫への一本化(住宅金融公庫と公営企業金融公庫は別法人化)ということになった。

 こうした完全民営化、規模半減・一本化という政策金融改革は、郵政民営化とコインの裏表の関係である。公的金融システムの観点からみれば、郵政が調達サイドで政策金融機関が運用サイドになるからだ。

 小泉政権下で、財務省は日本政策投資銀行の完全民営化、国際協力銀行の日本政策金融公庫への統合という屈辱を味わった。それ以前のどのような政権が行った政策金融機関の見直しでも、財務省はほとんど無傷だった。しかし、いってみれば二大戦艦(大和と武蔵)を同時に失ったような打撃を受けたのである。

 ところが、自公政権から民主党へと政権交代が行われると、郵政民営化を見直し、郵政再国有化が進むとともに、政策金融改革の逆回転となってきた。

 実のところ、政策金融改革の逆回転の一部は、政権交代の前から起きていた。

 政権交代前に、自民党が財務省の後押しで議員立法により、実質的に日本政策投資銀行の完全民営化をストップさせる法案を出し、民主党も相乗りする形で成立している。このとき、民主党は政権交代を控え、予算編成で財務省の歓心を買いたかったので、自民党を踏み台にした。

 いずれにしても、まんまと自民党も民主党も財務省の術中にはまったわけだ。これで一つの銀行に対する財務省の復権はできたが、残りの一つもここにきて終わった。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら